モルディブ一本釣りカツオのMSC認証取得 〜国を挙げた伝統漁業の保護とブランディング〜

漁業は私たち国家の生命そのものです。私たちが生活する土地、私たちを囲む海、どれもがモルディブで生きる私たちにはなくてはならないものなのです。漁業とモルディブ、そしてそこに生活する国民は永遠に途絶えることのない強い絆で結ばれているのです。」
− 第二代大統領 マウムーン・アブドル・ガユーム
インド洋は世界有数のマグロ類の漁獲海域です。そのインド洋に浮かぶ小さな島々からなる国、モルディブ共和国。モルディブでは現代に至るまで小さな漁船で生き餌を利用した伝統的な一本釣りが続いています。しかし、21世紀に入りモルディブのEEZ海域外では大型漁船によるまき網漁などが行われ、こうした伝統的な漁業への影響が懸念されていました。
そこで2009年7月、政府とMaldives Seafood Processor and Exporter Association(モルディブ水産加工輸出協会)は「混獲がゼロに等しく、環境に優しいモルディブの一本釣りカツオ」のブランディングを強化するため、MSC(海洋管理協議会)の認証取得に向けて動き出します。一漁業団体ではなく国規模での認証取得は初めての取り組みであり、審査には時間と労力がかかりましたが、2012年11月に「モルディブ一本釣りカツオ」はインド洋初となるMSC認証を取得しました。
MSC認証取得後の変化
モルディブの一本釣りカツオは冷凍や缶詰に加工され、MSC認証を取得した数少ないマグロ類として、サステナブルシーフードが広く普及するヨーローッパを中心に重宝されています。MSC認証取得以前も「環境に優しい方法で漁獲されたカツオ」として通常よりも高い値段で取引されていましたが、MSC認証取得後は需要が急速に拡大、に供給が追いつけない状況が続いています。この貴重なカツオ資源を守るため、EUのマーケットは資金援助を始めます。EUマーケットとモルディブ一本釣り漁師の架け橋となったのが一本釣り漁を支援するNGO団体、International Pole and Line Foundation(IPNLF)です。モルディブ産のカツオを取り扱う小売企業やサプライチェーンはこうした専門NGOとパートナーシップを結ぶことで、自社の持続可能な一本釣りカツオの調達を実現しています。
EUマーケットの支援一例
- マークス&スペンサー
(イギリス高級志向スーパーマーケット/マーケットシェア5%)
全てのツナ缶、90%以上のサンドイッチにてモルディブ産の一本釣りカツオを使用。
有効的な資源管理方法や生き餌に関する調査・研究に資金を提供。 - ミグロス
(スイス最大の小売/マーケットシェア50%)
マグロ類に関しては100%一本釣りのポリシーがあり、内50%がモルディブ産。
モルディブにてFishermen’s Community & Training Centerを設立し地元漁師の教育を行う。 - セインズベリーズ
(イギリススーパーマーケット/マーケットシェア16%)
マグロ類に関しては100%一本釣りのポリシーを持つ。
モルディブにおける持続可能なマグロ漁が与える社会経済的調査・研究に資金を提供。