Seafood Summit 2019 参加レポート-3
    ビジネスの力で社会問題を解決する

    big-fish

     

    今回のサミットでは水産業の社会的持続可能性について、ビジネスはどう対応すべきかが注目され、その糸口を探るべく企業やNGOによるセッションが展開されました。今回のブログでは弊社ツアーに参加いただいた方からも反響の大きかったものをご紹介します!

    Trade not aid(援助ではなく取引を)

    日本でもコットンやコーヒーなどで浸透しているフェアトレード。実は欧米ではサステナブル・シーフードにも応用され始めていることを紹介したのはFair Trade USAの創立者でCEOのPaul Rice氏です。フェアトレード商品は、一般的に「プレミアム資金」としてプラスされた商品価格の1-5%分のの売り上げが生産者に還元されるシステムで、その使途を生産者組合が決定し、生産地域の経済的・社会的・環境的開発に役立てています。Fair Trade USAは1998年の創設から、コストコやウォルマートなど大手小売を含むパートナー企業約1,400社、サプライチェーン上の労働者160万人以上が参加するにまで成長、その経済インパクトは約610億円相当とも試算されています。水産物についてはアメリカ、インドネシアなど9漁業、5,000人の漁業者が参加し、これまでに総額150万USD(約1億6千万円)が還元されています。現在は、Certifications and Rating Collaborationというプラットフォームを通じて、MSC、ASC、格付けプログラムを行うSeafood Watch、国際NGOのSustainable Fisheries Partnership*とも協働を進めています。

    フェアトレードがここまで成長できたカギは「ストーリーを求める消費者」にあります。消費者は商品の裏にあるストーリーを知ることで企業の環境や社会に対する姿勢を判断します。特に、67%の消費者が環境・社会的に責任のある商品を選ぶとされているアメリカの小売業界では、このような商品の売上が昨年の3倍になり、問題意識が他世代よりも高く次の主な購買層になるミレニアルやZ世代の存在が、企業が積極的に対応するモチベーションとなっています。

    ストーリーが見えやすいフェアトレード商品は、企業が価値を伝えやすいため消費者の購買にもつながりやすい、そしてそれが生産者にとっての継続の動機となるインセンティブとなる、というように持続可能性の三要素である経済、環境、社会が並立しやすいモデルと言えるかもしれません。
    *Sustainable Fisheris Parnership (SFP):サステナブル・シーフードの企業向けコンサルや漁業改善プロジェクト(FIP)の導入支援を行う。

    インクルーシブなサプライチェーンをつくるには

    持続可能とは経済、環境、社会のバランスが取れて成り立つものです。この持続可能で安定したサプライチェーンを「インクルーシブ(包摂的)」という概念の元、どのように構築すべきかをサステナビリティのコンサルティング企業(CSR Asia)、大手小売企業(Walmart Stores)、NPO(Fair Trade USA)が議論しました

    パネリストからの意見をまとめると、サプライチェーンにおける「インクルーシブ」とはコスト効率だけではなく関係者全ての声と文化的背景、気候変動などの環境問題、性差別問題など経済、環境、社会を包括的に考慮することです。さらに、経済、環境、社会が並立している状態(サステナビリティ)を実現した企業には経済的メリットが生まれているとする論文もこれまでに400本以上発表されています。つまり、企業は消費者からの突き上げを待っているのではなく、自らがメッセージを発信し価値を作り、(最終的には自社に還元されるため)労働者に対しても投資する、など先を見据え積極的に動かなければならないのです。

    こうした企業が現状の課題に関する知識や情報共有をするためには、NGOやアカデミアを中心とした非競争的なプラットフォームを構成することが今後不可欠であり、ビジネスのスタンダードになるという意見もありました。

    どう払う?社会的・環境的持続可能性に対するコスト

    環境的、社会的持続可能性を実現するためにはコストがどうしてもかかります。そのコストを企業はどのように捻出するのか、また、誰がその責任を負っているのかを、サステナビリティを企業理念の中心に掲げるサプライヤー(Anova Seafood、NorPac)やNGO(Comepesca)の視点から考えました欧米市場で東南アジア産のマグロ類を販売するAnova Seafoodは厳格な調達方針を掲げ、それに満たない漁業に対する支援を行うことで、新規顧客の獲得や安定した調達が可能となりました。またハワイを拠点とするNorpacは在庫管理の強化、リスク管理、ロス削減を追求し、商品のクオリティーを向上させることを目的に電子トレーサビリティシステムを自社開発しました。結果、質と持続可能性、そしてそれらを担保するトレーサビリティを兼ね備えた商品がハイエンドマーケットで重宝されています。

    国規模でもそうした取り組みは見受けられます。例えばメキシコでは北米マーケット向けの水産物を中心に漁業改善プロジェクト(FIP)やMSC認証の取得が進んでいます。漁業が認証を取得する事前段階からサプライチェーン上の企業が集まり、コストの分担、それぞれのインセンティブをNGOなどの専門知識を持った組織と話し合うことで、認証取得、維持に関する負担一点に集中することなく、マーケットでの成功を納めています。

    ビジネスとしてのサステナビリティの成功には、サプライチェーン上の企業がそれぞれの役割とインセンティブを理解し、長期的な目標を共有、合意していくことが一番の近道かもしれません。

    次回はアジアで広がるサステナブル消費についてお伝えします。

     

    (文:山岡未季)