Seafood Summit 2019 参加レポート-4
    アジアで広がるサステナブル消費

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    アジア開催となった今回のサミットでは、欧米市場と異なる問題を抱えたアジア企業の取り組みも多く取り上げられました。今までは生産国として、欧米市場を支えてきたアジアでもサステナブル消費が広がりを見せています。

    競争域と非競争域の明確化
    「サステナブル・シーフードが欲しい、という需要は業界から聞こえ始めているのに、肝心の商品がない」と、問題を提起したのはペニンシュラホテルのマネージメントを行うThe Hongkong and Shanghai HotelsのサステナビリティーディレクターのJanice Lao氏。シェフたちにとってバラエティーとクオリティーは水産物の選択において欠かせなく、たとえサステナブルでもどちらかが欠けていると顧客を誘致できるような魅力的なメニューはなりません。サステナブル・シーフードをマーケットで主流化させるためには適度な競争は必須、とした上でLao氏はサステナブル・シーフードを取り扱うサプライヤーを集めたデータベース、Seafood Marketplace Toolを紹介。シェフたちはこのデータベースを通して第三者が持続可能性を担保する商品を探し、購入することができます。利用者が増えれば、サプライヤー間で健全な競争が生まれ、クオリティーの向上、魚種の増加、金額の適正化が見込める、との考えから、このデータベースはアジア圏の企業に向けて広く公開される予定だそうです。

    アジアを牽引する日本の存在
    ムーブメントを主流化していくためには旗振り役となるリーディング企業の存在も重要です。アジアで21,642店舗を運営し、年間36億人が訪れるイオンはアジアでもサステナブル・シーフードの取り組みをいち早く始めた大企業の1つです。その背景には「消費者に対して責任ある商品を届けなければいけない」という企業の思いがあった、とイオン・トップバリュ タイランドの古家 信和氏。現在、同社が掲げる2020年目標「1) イオン株式会社連結対象の総合スーパー、スーパーマーケット企業で、MSC、ASCの流通・加工認証(CoC)の100%取得をめざす 2) 主要な全魚種で、持続可能な裏付けのあるプライベートブランドを提供する」の達成に向けて認証水産物の取り扱いを大幅に増やしています。また、消費者とのコミュニケーションも小売企業の使命と考え、認証商品専門売場「フィッシュバトン」を通して海洋資源の現状や認証水産物について消費者に伝える取り組みも積極的に進めています。

    なぜ日本はアジアをリードする存在になれたのか。近年めまぐるしい成長を見せる日本のサステナブル・シーフード市場について、弊社代表の花岡 和佳男が登壇。日本市場の成長の鍵として2020年東京五輪、そして2030年を年限とするSDGsのような明確なマイルストーンを企業が契機と捉えていること、そして昨年決議された漁業法改正も業界を後押しする形でビジネス主導のムーブメントが形成されている背景を説明しました。日本でも多種多様なビジネスがサステナブル・シーフード市場に参入することで、取り組みやアプローチの幅が広がり、健全な競争が生まれてきています。その一方で企業単体では解決できない問題に対して、企業間連携を意識するようにもなっており、今後のムーブメントの成長に期待を寄せると共に次の課題として輸入規制とトレーサビリティーの強化や漁獲証明や漁業管理の明確なルール作りなどをあげました。

    アジアの消費者のサステナブルに対する意識
    世界の水産物の約70%はアジアで消費される、というデータに対しサステナブル投資を行うオランダの銀行、Rabo BankのUmesh Madhavan氏は「中流階級の拡大と共に生活の質が向上しているアジアでは、今後さらに需要が伸びる」と説明。また、アジアでも若い層を中心に、環境に配慮された商品に対し、プレミアムの価格を払う傾向にある、とした上で環境や動物愛護に関するエコラベルのついた食品は2015年には全体の2.8%だったのに対し、2018年には5.1%まで成長していることを紹介しました。

    また、国際認証商品のみをセレクトし、商品とそのストーリーを消費者に伝える取り組みを行う楽天アースモールの眞々部貴之氏は、同ECサイトで行った消費者アンケートの分析結果を紹介しました。サステナブル商品をマーケティングするにおいて重要なのは、商品のストーリーを伝えることはもちろん、消費者に対し「持続可能な商品を選びましょう」と伝えるのではなく「あなたはもうすでにサステナブルな取り組みをしていますよ」とポジティブな呼びかけが重要とのこと。この2つのアプローチの組み合わせて行うことで、サステナブル商品のリピーター率が大幅に向上する、という分析結果には会場から驚きの声が上がりました。

    次回も引き続きアジアで広がる取り組みについてお伝えいたします!

    (文:松井花衣)