ウェビナーレポート:
    「SDGs と持続可能な調達、認証をどう選択するか~ 水産編」

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    今回は、「SDGs と持続可能な調達、認証をどう選択するか~ 導入編」の続編をお送りいたします。

    国際認証をビジネスにどう活用すべきなのか、前回はその入門編として水産認証、パーム油に関する問題の概要と企業の取り組みについて学びました。その続編として、水産認証に特化した「サステナブル ・ ラベル認証講座」~ SDGs と持続可能な調達、 認証をどう選択するか~水産編」が5月22日に開催されました。今回はスピーカーにる漁業現場と小売企業、末端消費企業をお招きし、水産サプライチェーンの川上から川下までを広くカバーする形で水産業界のビジネスにおける認証活用について考えました。

     

    講演:「責任ある水産調達と認証」(WWFジャパン 三沢 行弘 氏)


    私たちの社会、経済は生物多様性がもたらすサービス(生態系サービス)を前提に成り立っています。つまり生物多様性は社会・経済の基盤となっているのです。しかし生産や消費活動により海を含めた自然に大きな負担がかかっています。海への影響としては例えば水産資源の減少、生物多様性の破壊、海洋ごみ、気候変動があります。さらに水産サプライチェーン上では労働・社会問題も起きています。こうした中で漁業や養殖業に関連する課題を解決するためのビジネスにおける中心的な取組が持続可能な調達です。水産物取扱企業はまず「調達すべきもの」「調達すべきでないもの」を分け、優先順位とその定義づけを行うべきですが、ここで活用できるのが水産認証エコラベルです。信頼ある水産認証品を取り扱うことで、消費者に持続可能な消費という選択肢を与えることもできます。ただし、認証制度により、担保する範囲や取得するコストなどが異なり、さらに、各認証の信頼性を評価するには認証基準の内容に加え、その認証の基準作りや認定・認証・監査におけるガバナンスについても判断しなければなりません。そして、信頼ある認証制度による認証品を調達しつつ、それだけでカバーできない範囲の持続可能性を向上していくことが、水産物を取り扱う企業には求められています。

     

    パネルディスカッション:「水産認証の現状と今後の展望」


    日本初 社食への『サスシー』継続導入の取組みのご説明 & 企業等ネットワークのご提案 (パナソニック(株) 喜納 厚介 氏)

    パナソニックは、環境保全の取組みとして、約20年前からWWFジャパンと「海の豊かさを守る」活動を協働で実施しており、日本初のASC認証取得を実現された南三陸戸倉の持続可能なカキ養殖業も支援させていただいています。また、オリンピックのワールドワイド公式パートナーであること、SDGs達成への貢献機運もあり、全拠点の社員食堂(以下、社食)へのサステナブル・シーフードの導入を目指し2018年から提供を開始しました。しかし、導入のためにはフードサービス企業を含めたサプライチェーン全体でCoC認証を取得していただく必要があるため、この活動の意義・目指す姿を何度も説明し、ご理解をいただけるように努めました。ただ、1度認証を取得いただければ、拠点追加はノウハウが蓄積されるので比較的容易なため、現在では、フードサービス業界で13社が認証を取得され、7社の企業で認証食材を活用したメニューが提供されるようになりました。しかし、社食への導入はあくまでスタートであり、サステナブル・シーフードの重要性やMSC/ASC認証の認知を向上し、消費者の行動を変革することを通じてSDGs目標14へ貢献することが目標ですので、自社の社員への認知向上のみならず、取組み当初から他企業への導入支援にも取り組んできており、こうした取り組みはジャパン・サステナブルシーフード・アワードでも評価いただけ、受賞することができました。今後は、更に他の企業への導入が進むように、企業ネットワークを立ち上げ、低コスト・低業務負荷でのCoC認証取得の枠組みの提案や導入ノウハウ共有等を進めていく予定です。

     

    イオンの水産の取り組み(イオンリテール(株) 松本 金蔵 氏) 

    イオンは2006年にMSC認証商品の販売を開始しました。その理由は世界で枯渇している天然資源のうち、水産物(魚)は適切に管理できれば資源量が維持できるためです。そのために小売企業として出来る取り組みとして2014年に「イオン持続可能な調達原則」を策定しました。2017年には「持続可能な調達2020年目標」を策定し、MSC、ASC認証商品への切替やその流通のためのCoC取得を目標としました。MSC、ASC認証を選択したのはイオンがグローバル企業であるため、国際基準でトレーサビリティも確立する認証である必要があったためです。

    小売企業としてお客様に「サステナブルだからこそ美味しい」と認識いただくために認証商品だけを販売するコーナー(Fish Baton)を特設し、商品の質や数にも力を入れています。例えばMSCさばを使用した製品は月間50万パックを売上げる人気商品です。自社で加工も行い、ASCパンガシウスは日本国内の全輸入量の18-20%を輸入し、骨取りや皮なしなどお客様のニーズに対応した製品も開発しています。このような取り組みはメディアにも取り上げられ、2018年には「第19回グリーン購入大賞」で大賞・農林水産大臣賞も受賞しました。

    この15年で認証商品の売上は25倍にまで増加しました。原料販売だけでなく自社で加工できるかが売上につながります。これからもお客様に「サステナブルだからこそ美味しい」と思われるような商品を開発していきたいと思っています。

     

    MSC認証を取得した経緯と今(明豊漁業(株) 松永 賢治氏)

    私は焼津出身です。子供の頃はよく港で遊んでいましたがカツオ、マグロ漁船がずらりと停まっていました。昭和50年代当時遠洋一本釣り冷凍船は400隻程度ありましたが平成8年には40隻、現在は22隻しかありません。大学卒業後に地元の水産加工会社に入社し、2008年に宮城に異動しましたが、加工原料であるカツオの水揚げの減少を目の当たりにしました。2011年の震災を機に漁業を復活させるため一年発起。中古船を購入し会社を立ち上げました。2014年に以前から興味のあったMSC認証の詳細を知り取得を決意、2016年にカツオとビンナガの一本釣り漁業で認証を取得しました。現在は主にイオン、外資系ホテルチェーンで販売しています。

    自分たちが率先して環境の改善や資源の減少に取り組まなければいけないという思いから取得し、取得後はよりその責任感が強くなりましたが、年次監査費が年々上がっていること、他の漁業者がなかなかついてきてくれないことが気になっています。今のままだと漁業が続けられません。消費者にはもっと取り組みを知ってほしいと切に願っています。

    次に、三沢氏、喜納氏、松本氏、松永氏をスピーカーに、弊社山内をファシリテーターとしたパネルディスカッションと質疑応答が行われ、認証の対象魚種の拡大や生産者が負担するコストのケアなどについてが議論されました。

    サステナブル・シーフードがビジネスの中で普及していくには魚種の拡大も必要ですが、利用者のニーズにあった規格への対応のほか、認証商品以外でも漁業や養殖業を持続可能にするための漁業・養殖業改善プロジェクト(FIP、AIP)の普及、物理的にどうしても離れてしまう生産者と消費者・小売をつなげて生産者のモチベーションを維持できるのかも鍵になりそうです。このようにビジネス面から持続可能な水産業を作り上げていくために関われる方法はいくつもあります。各企業がどのような形で関わるのか、それを決めて示す調達方針はいわば「コアマッスル」です。まずは調達方針を固めてから強化したいポイントに合わせて取り組んでいくことが重要です。

     

    シーフードレガシーでは認証の最適な組み合わせなど、一社一社にあった調達方針をお客様と一緒に作らせていただいております。ご興味ある方はいつでもinfo@seafoodlegacy.comまでご連絡ください。