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改正漁業法にどう対応するか 持続可能な漁業を目指す FIPに注目(2/2)

改正漁業法にどう対応するか 持続可能な漁業を目指す FIPに注目(2/2)

FIP(漁業改善プロジェクト)とは漁業者だけでなく、行政、研究者、企業、NGOなど様々な専門知識をもった人が集まって漁業の課題を解決し、MSC認証を取得できる、つまり持続可能なレベルにまで改善するプロジェクトのことです。

この4年間でどれくらい認証取得に近づけたのでしょうか? (前編はこちら

 

4年後の今、どれくらい改善した?

1. 資源評価・管理の土台が作られた

資源評価の精度を上げるために大野さん、中村さんは必要な細かい漁労データの収集を行っています。データの記録は、当初は手書きで行っていましたが、船団間の漁労機器のデータを共有・管理するシステムを開発するISANAというシステムを導入し、デジタルで行えるようになりました。このデータを使って今ではMSC認証基準を満たすレベルの資源評価を弊社が実施してます。

資源評価、管理についても大きな進展がありました。
日本の沿岸資源評価は、過去数年分のCPUE(単位努力量あたりの漁獲量)*1の変動を見て確認する手法のものが多く、スズキも例外ではありませんでしたが、これでは実際の資源量の変動や、MSY(最大持続生産量)*2 時の資源量と比較した時の状態を把握するのが難しい状態でした。そこで資源状態の把握、さらに資源管理のシミュレーションができる手法を、水産資源管理学の権威であるワシントン大学のレイ・ヒルボーン博士と弊社の小池春子博士が共同開発しました。

こうした取り組みの結果、スズキの資源状態は90年代から2000年初期にかけて、減少状態から回復、安定傾向にあることがわかりました。また、これまで行ってきた自主的管理(抱卵・産卵期のスズキ、体長25cm未満のセイゴは獲らないなど)に科学的な根拠を持たせられ、さらに、どのような状態になったら休漁期間を延長すべきかもわかるようになりました。

スズキは2021年度から水産庁の資源評価対象魚種となりました。水産庁は対象魚種をこれまでの50種から200種程度にまで拡大するため、スズキのように、新しく対象となったものの資源量がわからない別の魚種に対してもこの手法が応用できるでしょう。

 

2. 絶滅危惧・保護種の記録を継続、電子化も視野に

FIPを通じて収集したデータによると、操業中に絶滅危惧・保護種(例:アオウミガメ)は混獲されていないことがわかりましたが、仮に遭遇した場合は記録することにしました。さらに、ISANA開発する株式会社ライトハウスと共にその記録を電子的に報告するシステムも現在開発しています。また、ソナーを用いて底生生物への影響を測る仕組みも開発しています。

 

3. 漁業者の声を反映させる仕組みがあることを証明

千葉県は、県、千葉県資源管理協議会、地域漁業者協議会、海区委員会、漁業者とで、資源管理の評価、方向性を決めて共有、漁業者による実践、その確認を行う体制ができていることを証明しました。(例:千葉県における資源管理の高度化推進について)


海光物産とシェフが共同開発したスズキのパイ包み焼き

 

予備審査で課題としてあげられた3点について、4年間の取り組みを通して大きく改善することができました。

4年間の取り組みについて大野さんは「頭では描けていた理想やビジョンを具体的に、時には数値目標を決めて計画的に進めるFIPは、日本の沿岸漁業には最も適したツールだと思います。たった一人で始めた取り組みも、今では多くの理解者や仲間ができました。なぜならこれが『正しいことであるから』に他なりません」と話しています。

5年目に突入した今年は、千葉県の他の漁業者とも一緒に資源管理を進めていくこと、また、資源評価もさらに確立させていく予定です。

MSCの認証取得に向けたチャレンジに引き続きご注目ください。
https://seafoodlegacy.com/project/tokyobayfip_seaperch/

改正漁業法に対応した資源管理や漁業を持続可能にしていく方法について詳しく知りたい方は弊社漁業科学部(sfl-fs@seafoodlegacy.com)までお問い合わせください。

 

 


*1 CPUE・・Catch Per Unit Effortの略。漁獲量は漁獲努力量(漁船の隻数や漁具数等)によって変動するため、漁獲量を漁獲努力量で割って算出する。資源状況を見るための指標として用いられる。
https://www.jfa.maff.go.jp/j/kikaku/wpaper/h29_h/trend/1/t1_2_1_1.html

*2 MSY ・・Maximum Sustainable Yieldの略。その資源にとっての現状の生物学的・非生物学的環境条件のもとで持続的に達成できる最大(あるいは高水準)の漁獲量。漁業法改正によりMSYを元にした管理が行われることになった。
https://www.jfa.maff.go.jp/j/suisin/s_kouiki/setouti/pdf/s23-7.pdf