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連続ウェビナー「海の自然資本とESG投融資」 報告:第1回「海の自然資本と投資家の動きを知る」

連続ウェビナー「海の自然資本とESG投融資」 報告:第1回「海の自然資本と投資家の動きを知る」
キャプション:右、WWF(世界自然保護基金)米国 ルーシー・ホームズ氏、左はマーガレット・クーロー氏(WWFインターナショナル )

 

海の環境保全、水産資源管理は世界共通の課題であり、国連の持続可能な開発目標14にも掲げられています。

そして今、気候変動と同様に、海洋や森林といった自然資本を守るために金融業界が動きはじめています。

2021年6月には、自然資本に関連するリスク・機会に関する情報開示を企業や金融機関に求める国際的なイニシアチブ、自然関連財務情報開示タスクフォース(TNFD)が発足。企業の環境評価を行うCDP(カーボン・ディスクロージャー・プロジェクト)は2024年を目処に海洋分野を対象に加えることを発表しています。

連続ウェビナー「海の自然資本とESG投融資」ではこうした最新情報を交えながら欧米の金融機関の動向などをお伝えし、豊かな海洋資源に恵まれた日本が、ブルーエコノミーに関するESG投融資において取るべき戦略を考えます。

主催:株式会社シーフードレガシー
後援:UNEP FI(国連環境計画 金融イニシアティブ)
進行役:日経ESG シニアエディター・東北大学 教授 藤田香 氏

 

報告:第1回「海の自然資本と投資家の動きを知る」

・WWF(世界自然保護基金)インターナショナル マーガレット・クーロー氏よりビデオメッセージ
・講演 WWF 米国 ルーシー・ホームズ氏
・ロックフェラー・アセットマネジメント社  ロランド・モリーリョ氏
・話題提供 第一生命保険 アナリスト 久保友人氏

イベント詳細:https://us02web.zoom.us/webinar/register/WN_zGHstImyQ9K-jUU1RbHDBw

 

<ポイント>
・海の経済的価値はおよそ世界第七位におよび、今後も拡大傾向
・海洋環境は悪化の一途
・海洋環境・資源を守るための投融資が始まりつつある
・金融機関向けに役立つガインダンスなど多数存在

 

冒頭、WWFインターナショナルのマーガレット・クーロー氏からメッセージをいただきました。

海は漁業や観光、海運、再生可能エネルギーなど私たちに多くの経済的な価値をもたらしているとクーロー氏。WWFの試算(2015)によると、海の経済的な価値は年間2.5兆米ドルにもおよび、OECDは、この海の経済価値が2030年には3兆米ドルと予測していることが紹介されました。それだけにアフターコロナに向けて環境、そして海洋保全に配慮したグリーンでブルーなリカバリーが重要であることを強調しました。

しかし近年、海は汚染、自然の喪失、気候変動の三つの影響を大きく受けており、状態の悪化が深刻化しているとクーロー氏。こうした状況を変えていくためには、金融セクターのレバレッジを活かした海洋保全をはかっていくことが重要であると述べました。

 

出典:OECD Ocean economy and innovation
https://www.oecd.org/sti/science-technology-innovation-outlook/ocean-economy-and-innovation/

 

続いてWWF米国のルーシー・ホームズ氏からは、海を保全をする意義、ブルーエコノミーとは何か、世界の金融機関動向、シーフードセクターにおけるESG投資の動向やブルーエコノミーを実現するために役立つ金融向けのツールが紹介されました。

ホームズ氏は、海洋経済価値は2.5兆米ドルとおよそ世界第七位にも及ぶ(GDP世界第7位であるフランスの2.9兆米ドルと比較)経済規模があるにもかかわらず、プラスチック問題やサンゴ礁の消失など海洋環境の破壊は著しく、環境管理ができていないと指摘。こうした状況を金融機関がどう捉えているのか、UNEP FIが80の金融セクターを対象に調査したところ、課題に気づきはじめているものの、具体的な取り組みはこれから、という状況であることがわかったといいます。

ただ、気候関連財務情報開示タスクフォースTCFDでも、気候変動に関連して海洋資源のリスク評価が求められている他、水産資源も含めた生物多様性に関連するリスク評価を求めるTNFDも発足するなど、金融サイドからブルーエコノミー を実現する動きは着実にはじまっています。

ホームズ氏は、金融機関が海の持続可能性を高める投融資を行っていく上で役立つツールとして、UNEP FIが主導し、WWFや欧州投資銀行などの協力によって金融機関向けにつくられた「持続可能なブルーエコノミー 金融原則」、海の持続可能性を高めるための投融資のガイダンス「Turning the Tide:How to finance a sustainable ocean recovery」を紹介しました。このガイダンスでは、サステナブル・シーフードについて、オペレーション、市場、規制、風評についてどのような具体的リスクがあるか、など政策担当者に役立つ情報が提供されています。この他にも、金融機関がブルーエコノミーの推進に役立つ投融資を実現するために役立つツールが多数示されました。

 

次に、ロックフェラー・アセットマネジメント社のロランド・モリーリョ氏も、前段のお二人と同様に、海は経済的に高い価値がある一方で、化学物質やプラスチックによる汚染、CO2の増加による海の酸性化、魚の乱獲などの問題が山積しており、こうした問題を投融資を活用して解決していく必要があると語りました。
その上で、株主として投資先企業の事業のあり方に積極的にかかわり、企業が持続可能性の向上に取り組むように働きかける「エンゲージメント」が重要であると主張。2014年から2016年にかけて、ESG関連で議決権への関与を掲げたファンドは41%にものぼり、エンゲージメントを取り入れた方がパフォーマンスも向上するという調査結果も紹介し、エンゲージメントの重要性を強調しました。

最後に、久保友人氏(第一生命保険アナリスト)からは、近年同社が資産運用の際に、ESGテーマ型投資を行っており、2020年段階で類型投資金額は7千億円、2023年度末までに1.2兆円まで増やす目標を掲げていることが紹介されました。また、2021年2月に、みずほ銀行がアレンジした、世界トップシェアを誇るタイ・ユニオンのサステナビリティ・リンク・ローンに参加した経緯や内容をご紹介いただきました。海洋資源を守る投資をしたいと思いながらも本業とのつながりが少ない中で、今回、投資ができたことは貴重な機会だったとし、今後も海洋保全につながる投資への期待を語りました。

今回は第一回として、海外を中心に海を守っていくための投融資の動向、具体的な取り組み事例についてご紹介いただきました。私たちに日々、多くの恵みを与えてくれる海を守っていくためのESG投資ははじまったばかりではありますが、実現のためのツールはすでに存在し、金融業界が着実に動き始めていることがわかりました。

次回は11月末ごろに開催します。詳細はメールマガジンでご案内いたしますのでこちらからご登録ください。