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「持続可能な水産業への投融資を実践する」 -連続ウェビナー「海の自然資本とESG投融資」 第3回報告-

「持続可能な水産業への投融資を実践する」 -連続ウェビナー「海の自然資本とESG投融資」 第3回報告-

世界では、海洋生態系を維持しながら、持続的な経済活動を目指すブルーエコノミーという考え方が浸透しつつあります。そこで弊社は、欧米の金融機関の最新動向などから、日本がブルーエコノミーに関するESG投融資において取るべき戦略を考える連続ウェビナー「海の自然資本とESG投融資」(全3回)を2021年から開催しています。

第3回のテーマは「持続可能な水産業への投融資を実践する」。
今回は、実際に、金融機関の皆様が持続可能な水産業に投融資を行う際、企業とのエンゲージメントに役立つガイダンスなどのツールのご紹介を行いました。
第1回第2回の報告はこちら)

● 開催概要 ●
日時:2022年2月9日(水)15:00-16:40
主催:株式会社シーフードレガシー
後援:WWF、 国連環境計画 金融イニシアティブ(UNEP FI)
進行役:​​ 花岡和佳男(株式会社シーフードレガシー 代表取締役社長)、藤田香(東北大学教授、日経ESGシニアエディター)

 

「フィッシュショック」時代 金融セクターのレバレッジが重要

開会挨拶として、弊社代表取締役社長の花岡和佳男から、「現在、海洋は気候変動やプラスチック問題、乱獲、IUU漁業などにより危機的な状況にある。さらに、かつては世界最大の水産大国だった日本の漁業量はピーク時の1/3に、従事者は1/4まで減少、国民の水産物消費量は過去20年で4割減少するなど文字通り、『フィッシュショック』にある」と問題提起がなされました。

その上で、「金融セクターのレバレッジをいかし、投融資先の組織がサステナビリティに取り組むように働きかけることが重要であり、今回のセミナーが海洋資源を守るための投融資を実践するために役立つセミナーになれば」と語りました。

まず、日本の水産業界、そして養殖業界のサステナビリティがどう評価されているのか、各スピーカーから共有されました(一部省略)。

●講演「貸し手と投資家に影響を及ぼす水産物のサステナビリティ」

フランソワ・モズニエ氏(プラネット・トラッカー 海洋プログラム責任者)

商業的な漁業により海洋生物の資源量は著しくアンバランスな状況になっています。近年は、こうした状況を受け、養殖が増加していますが、飼料となる大豆が森林破壊を引き起こすなど、問題の根本的な解決にはなっていません。私たちの分析では、日本の水産企業は成長を続けているものの、その実態は海外事業展開や垂直統合、コスト削減といった経営努力によるものでこれでは長期的な成長は見込めません。一方、水産物加工会社がトレーサビリティーを導入した場合のEBITマージンは2倍になることがわかっています(下図)。つまり、資源管理やトレーサビリティーを行えば、海洋資源を守るだけではなく、コストを減らし、キャッシュフローを増加させていくことができるのです。

 

 

●講演「水産企業をESG投資の面から評価する① シーフード・スチュワードシップ・インデックス」

ヘレン・パッカー氏(ワールド・ベンチマーキング・アライアンス(WBA) シーフード・ベンチマーク リード)

WBAは、SDGs達成に向けて主要なキープレイヤーとなる企業2,000社を特定し、パフォーマンスを評価するため、社会、食・農業、脱炭素・エネルギー、自然・生物多様性・デジタル・都市・金融システムの七分野のベンチマークを提示しています。また、世界中で280以上の多様なセクターとアライアンスを組んでおり、21の投資家とのアライアンスは 運用資産総額最大10兆ユーロにものぼり、投資調査を行うなど積極的に連携しています。

水産に関しては、ガバナンスおよび戦略、生物多様性保全の取り組み、トレーサビリティーとIUU、社会的責任の4つの指標をもとに30のキーストーン企業を評価しています。

 

結果は以下の通り、1位はタイユニオン、日本企業はいずれも低位です。ガバナンスおよび戦略の分野をみると、全体平均が31%に対し、日本企業は26%。日本企業7社中4社が水産物に関連した持続可能性の目標設定を行っているものの、スケジュールにまで落とし込んでいるのは1社(ニッスイ)のみとなっています。生物多様性保全についても14社が目標を定めていますが、期限を定めている会社はゼロでした。

 

 

水産養殖分野においては、抗生物質の使用削減や動物の福祉などの取り組みを総合すると日本の平均は13%(全体31%)。社会的責任分野においては、強制労働禁止のコミットメントを出している企業は7社中3社ですが、包括的なデューディリジェンスを行っている企業は0社となっており、コミットメントが出されても行動がともなっていない実態が浮き彫りになっています。また、IUUリスクに関する包括的な評価を行っている企業は0社、健全なトレーサビリティーにコミットしている企業は3社という結果でした。

 

●講演「水産企業をESG投資の面から評価する② Coller FAIRR タンパク質生産インデックス」

リリー・スチュアート氏(FAIRRイニシアチブ リサーチ&エンゲージメントマネジャー)

FAIRRは、畜産業によるESGのリスクと機会への関心を高める機関投資家のネットワークで、48兆ドルの資産を保有しています。
養殖関連企業のスコアをみると8割の企業は動物の福祉に関する情報を出しておらず、これは畜産企業と比べると低くなっています。サケの飼料問題にも取り組んでいますが、飼料用の魚の減少により魚粉は上昇し続けており、コストの半分を飼料が占める場合もあります。大豆や昆虫などの代替飼料については、サステナビリティに不明確な部分もあり、投資家の参加のもと、小売業者や飼料生産者を巻き込んで円卓会議を行っています。

課題の多い日本の水産業界、そして養殖業界ですが、この状況を打破していくために重要なのが金融の力です。そこで、金融機関の皆様が、水産業界のサステナビリティを高めるためにどのような投融資を行えばよいのか、その重要な手がかりとなるガイダンスについてご紹介します。

 

●講演「金融業界へのガイダンス- UNEP FIのガイダンス紹介」

ルーシー・ホルムズ氏(WWF US コモディティ・ファイナンス・チーム シニア・プログラム・ マネージャー)

 

WWF、UNEPなどが作成した「持続可能なブルーエコノミー金融原則」を土台にしてUNEP FIが、この原則を実行するためのガイダンス「Turning the Tide:How to finance a sustainable ocean recovery」​​を作成しました。ここには金融機関が持続可能なブルーエコノミーを実現するために投融資する際、実装しなければいけないことをまとめてあります。

まず、海の持続可能性が阻害された場合、環境や社会にどんな影響があり、それが、金融・ビジネスセクターにとってどんなリスクとなるのかを分析しています。さらに、ケースに応じて、「避けるべき(赤)」「課題あり(黄)」「推奨(緑)」の3段階で金融機関がどう行動すべきかを提言しています。
たとえば、IUU漁業の場合、「企業が所有する漁船、または企業のサプライチェーン内の漁船によるIUU漁業活動の証拠がある。または現地法や国内法、国際法規を順守していない」という場合は、投融資をしないことを提言しています。

ぜひ、このガイダンスを活用して投融資を行っていただければと思います。

日本語版(一部抜粋)はこちら

 

本セミナーは第1回では海の経済価値、第2回では国際的に生物多様性と気候変動対策が求められる中で金融機関ができること、そして第3回の今回は、実際に投資する上での判断基準となるツールをご紹介しました。

金融は水産業界のサステナビリティを加速させる大きな推進力です。シーフードレガシーでは今後も両業界の架け橋となるべく、セミナーを開催する予定です。詳細は弊社ウェブサイトやメールマガジン(申込はこちら)、SNS等でお伝えいたしますのでぜひチェックください。