説明責任の強化
シーフードレガシーの全ての活動は、「2030マイルストーン」に到達するまでの道筋を描いた「変革の理論(Theory of Change)」に基づいています。その核となるのは、水産ビジネスにおける「説明責任(Accountability)」を強化し、構造そのものを根本から変容させていく「マーケット・トランスフォーメーション」です。
Phase1. 説明責任への「意志」の醸成
変革の第一段階は、先駆的な企業が自発的に説明責任を果たすための環境整備から始まります。
かつて世界最大の水産大国として世界に名を馳せ、世界中から水産物が集まる世界第三の輸入水産物市場でもあった日本は、その水産物の乱獲・乱売・乱食が海洋生態系の破壊を助長しているとして、厳しい国際批判にさらされていました。
しかし、SDGsの開始や東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会、大阪・関西万博など国際的な大規模イベントの日本開催が続くにつれ、大手水産関連企業群が「責任ある原料調達」を自らの経営戦略に組み込む動きが加速しました。さらに今は、ESG投融資の拡大が、企業の自発的な説明責任に対する「意志」を経済的な合理性へと結びつけています。
こうした流れの中、先駆的な企業群が「責任ある水産物調達ラウンドテーブル(The Japan Responsible Seafood Roundtable、以下JRSR)」に代表される連携プラットフォームに結集。個社では解決が困難な構造的課題に対し、共同方針の策定やサプライチェーンの透明化を通じて、市場に対する「説明責任」を自ら率先して果たすという、新しいビジネスの規律が生まれようとしています。
金融機関を通じた変革
Phase2. 説明責任の「制度化」と実装
先駆的な企業が自発的に説明責任を果たす取り組みが進むにつれ、変革は第二段階へと進みます。
こうした企業は、自主努力に依存する限界(不公平な競争環境や実効性の停滞)を打破するため、自らに課した「責任ある原料調達」とその「説明責任」を業界全体の標準とするよう、政府へ働きかけを開始します。これが、説明責任を自主努力から社会の仕組みへと昇華させる、決定的な転換点となります。
鍵は、環境・経済・社会への影響が特に大きい企業群が声を一つにすることです。
日本では、IUU漁業対策を目的に自国市場が持つ国際購買力をレバレッジとする「水産流通適正化法」に対し、2024年には主要水産企業13社が対象魚種の拡大を求める共同要請書を提出しました。また、業界最大手2社の代表が揃って公の場でトレーサビリティの強化を訴えるなど、民間からの力強い要請が慎重だった政府の姿勢を劇的に変えてきました。
説明責任の分野で、今後、さらに、先駆的な企業群の声を社会システムの変革の後押しになるよう加速させていきます。
Phase3. 先駆者モデルをアジア規模の社会基盤へ
変革の第三段階でこうした国内での先駆的なアクションは、いよいよアジア市場全体の「必須要件」へと姿を変えます。
全ての事業者が説明責任を全うできる社会への移行を確実なものにするためには、ビジネス・金融・政策・市民社会といった異なるセクターの動きを一つの大きな目的へと調和させる、「指揮者(Orchestrator)」の存在が欠かせません。これがこの変革の理論、第三段階の重要な要素です。
水産サステナビリティに特化したアジア最大級のイベント「サステナブルシーフード・サミット(TSSS)」や、日本初の水産サステナビリティ専門メディア「Seafood Legacy Times」が、その役割を担っています。これらがハブとなり、胎動する多様なイニシアチブが共鳴し合い、「水産業界の合意」が進みました。
今、アジア圏では政策決定や社会実装における力学を把握するCSO達による、課題解決のための連携体制を構築する動きが加速しています。国際情勢が混迷を極める今だからこそ、私たちは変革のタクトを止めることなく、ステークホルダーとの共鳴を推進力に、豊かな海のレガシーを次世代へ引き継ぎます。
S.E.A.FOOD PLATFORM DESIGN LAB.
ASIA CSO COLLABORATION