なぜ今?世界が注目する日本のシーフード事情

なぜ今?世界が注目する日本のシーフード事情


ここ近年、政府の「クールジャパン政策」の成果か、日本が注目を浴びる機会が増えてきています。2013年には「和食」がユネスコ無形文化遺産に登録され、そして2020年には東京オリンピック。もはやsushiやsashimiと言った和食の主役たちはどこの国でも現地の言葉のように通じるので驚きです。しかし、この和食を支えている日本のシーフード事情はそれほど「クール」ではないようです。

日本の高齢化や過疎化と反比例するかのように、日本の漁業が衰退しているのはご存知でしょうか。食用の漁業生産は1970年代にピークの約8000万トンを迎え、2014年には半分の約4000万トンにまで減少、今では輸入量が国内生産量を上回っています。また、日本人一人あたりの魚類消費量も年々低下しています。

漁業が最盛期を迎えた約80年前には200万人いたとも言われる漁業者は17万人にまで減り、代々漁業を営んできた地方の漁師たちも、先行きの見えないこの産業に危機感を感じ、自分の代で船から降りる決心をする方も多いようです。

広大な海にある資源は無限のように感じます。しかし、自然のサイクルの一部である海洋資源を適切な根拠に基づいてきちんと管理せずに、大量に獲り続けた結果、日本の水産資源は枯渇し、かつての活気を失っています。


一方で、驚くことに世界的に見ると漁業産業は右肩上がりの成長産業なのです。世界の人口も増えていますが、一人あたりの消費量も増えています。近年のヘルシー思考の影響も大いにありますが、世界的な「和食」ブームがシーフードの消費に拍車をかけているようです。漁業産業で利益を上げている多くの先進国では、徹底された管理体制で持続可能な利益が生まれています。そうした国々ではサステナブルシーフードの認知度も高く、エコラベルの使用など、環境に配慮したグリーンなマーケティングで利益を伸ばしているようです。

かつては魚屋さんに並ぶ旬の魚を旬の時期に楽しむのが主流でした。しかし、運搬技術や冷凍技術の発達、そして大型量販店やチェーン店での流通が主流になった今、日本の水産業ではコンシューマーアップ、つまり、目安となる販売価格が先に決まってしまっているのが現状です。回転寿司でマグロが流れていない、なんて今の私達にはありえないことですよね。値段に合わせるため、安価な小さいマグロを大量に獲り続けることで、卵を産む親魚が減少し、マグロ全体の資源量が激減する・・・。この様な負のサイクルは日本の漁業全体で起こっていることなのです。

自国の水産業が低迷しているとはいえ、世界からトップクオリティーのシーフードを輸入する日本は、世界のシーフード業界に大きな影響を与えていることは確かです。そして、注目を浴びる和食を支える日本の魚食文化。2020年の東京オリンピックを前に、クールジャパンの「和食」の名前だけが先走りしないよう、日本の漁業でも、“「自然を尊ぶ」という日本人の気質に基づいた「食」に関する「習わし」”(農林水産省「和食;日本人の伝統的な食文化」より抜粋)が持続できるようなポリシー作りとサステナブルシーフードの認知と普及が急がれます。

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