サクセス・ストーリー1-2 モントレーからアメリカ全土へ

サクセス・ストーリー1-2 モントレーからアメリカ全土へ

前回ご紹介したアメリカ西海岸の小さな港町モントレーの歴史。貴重な海洋資源と地元の水産業を壊滅的状態に追いやってしまってから60年、世界のサステナブルシーフード界を率いるリーダーとしての変貌を遂げました。1999年に本格的に始動し始めたモントレー水族館のSeafood Watch。今回は、このSeafood Watchがアメリカの市場にもたらした影響について考えます。


(前回の記事はこちら)


水族館の企画展から発展して設立されたSeafood Watch。その裏には来場者の反応があります。普段食卓に並ぶ魚がどのような状態にあるのか…今まで考えたことのなかった海洋資源の実態を知り、自分達にできることはないのだろうか、という思いに答えるかたちで誕生したのがSeafood Watchなのです。Seafood Watchがアメリカ全土に広がったのも、この自発的な活動の連鎖反応があったからでしょう。

Seafood Watchを率いる、ジェニファー・ディアント・ケメリーさんはこう語っています。

“No one wants to be on our Avoid list, so we are seeing behaviors changing. It used to be that quality, price and consistency were the things companies cared about when they were sourcing seafood. Now there’s another purchasing spec — sustainability.That’s how I know Seafood Watch has moved beyond being a trend into something more — it’s an expectation of a norm.“
誰も赤いリスト(資源枯渇!)に載ってる魚を提供している、と言われたくないのよ。だから、行動が変わってきた。一昔前は、「クオリティー・値段・安定性」が水産物調達において企業が最も気にすることだった。でも今は「サステナビリティー」がスペックに加わったわ。それで、私達の活動がただのトレンドではなかったことが分かったの。水産業界に新しい水準ができたわ。



現在も残る展示。バーを引くと水槽の生き物がお皿の上に!

彼女の言葉通り、始めはモントレーの地元の市場やレストランが参加していた活動が、口コミで広まり消費者の需要がマーケットに伝わると、次々に大きな変化が起こりました。この連鎖の繋がりでSeafood Watchはたった十数年でアメリカ全土に1,029のパートナーを持つ大きなムーブメントへと変貌したのです。このパートナーの幅の広さも成功の鍵といえるでしょう。親子連れで賑わう各地の動物園や水族館、アメリカ全土にあるスーパーマーケット、オシャレなニューヨークのレストランから田舎の小さなレストラン。そして企業の社食などを手掛ける大手ケータリング会社など。アメリカに住んでいれば、一度は見たことのあるマーク、と言っても過言ではないでしょう。


生き物を間近に感じたあとだからこそ素直に受け止められるメッセージ。

Seafood Watchを支えるパートナーは4種類に分類されます。動物園や水族館が中心となった「コンサベーションパートナー」は来場者にSeafood Watchガイドの配布やのコンサベーションメッセージを伝える役割を果たしています。「レストランパートナー」はメニューから赤いリスト(資源枯渇!)に掲載されているシーフードを排除し、サステナブルシーフードの知識を持つスタッフが接客することが義務付けられています。レストランや小売業者からなる「ビジネスパートナー」は環境に配慮して漁獲されたシーフードのみを扱い、マーケットがサステナブルシーフードにシフトしていけるように牽引していく役割があります。そして生産者や供給者から構成される「ビジネスコラボレーター」は、Seafood Watchに基づいた情報と表示を顧客に開示する義務があります。このように役割別のパートナーを持つことで様々なターゲット層に広くアプローチすることが可能になったのです。

Seafood Watchの大きな成功の1つは、ARAMARKやCompass Group North Americaといった大手ケータリング会社と自然派思考の顧客から絶大な支持を得るWhole Foods Marketをパートナーに持ったことでしょう。年間20億食を提供するARAMARKと1日に700万食(年間にしてなんと25億食!)Compass Group North America、そして460店舗を展開するWhole Foods Marketの3社だけでも、サステナブルシーフード市場に大きな影響を及ぼしたことは明らかです。


アメリカのグーグルの社食にて。サステナブルシーフードをふんだんに使ったチョッピーノスープ!コンパスグループが提供しています。

Seafood Watchが世界から注目されるのはもうひとつ理由があります。モントレー水族館のSeafood Watchチームには専属の科学者が何名も在籍し、世界中の科学者と協力しながら確かな科学をベースにシーフードを評価しています。そのレポートは常にSeafood Watchのホームページから見ることができるのです。情報を公開することで透明性を保ち、外部からも積極的に意見を取り入れていることは、信頼を得る鍵ともなっています。そうしてエコラベルの使用を各方面に推奨すると同時に、国内外、多数のシーフードエコラベルの評価も行っています。日本でも手に入るMSC認証ももちろんSeafood Watch推奨のエコラベルですよ!

イメージしてみてください。お店に並ぶシーフードに、赤(資源枯渇!)・黄(あまりおすすめではないが、可)・緑(おすすめ)の札が貼ってあったら、あなたはどれを選びますか?思わす今晩のメニューを変えてしまうかもしれませんね!

モントレー水族館Seafood Watchのホームページはこちらから!


出典:Monterey Bay Aquarium Seafood Watch Press Kit, Aramark, Compass Group North America

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