『DNAで防ぐ、水産物の表示偽装』By FishWise

『DNAで防ぐ、水産物の表示偽装』By FishWise


世界のサステナブルシーフード界から選りすぐりの記事をレビューしてお届けしている、“Seafood Legacy Pick-Up Blog”。第3回目はアメリカ西海岸の水産コンサルティングNGO「FishWise」のブログ記事をご紹介。

今回ご紹介するブログは日本でもよくニュースになる食品偽装についての記事です。日本でもここ1ヶ月だけで、下記のような水産物の偽装がニュースになっています。


サクラエビ偽装、実は「アキアミ」 静岡県、業者を行政処分 (@S[アットエス])

<特区カキ流用>宮城県漁協「制度の趣旨逸脱」 (河北新報)

ワラサをゴマサバと偽装 魚市場に行政指導 (@S[アットエス])


食品偽装により企業が受けるダメージは億単位とも言われ、欧州小売主導の業界団体であるGFSI(Global Food Safety Initiative)はその被害額を企業の年収の2%〜3%とも推計しています。またGFSIは、食品偽装が増大している背景 について、食品流通のグローバル化に伴いサプライチェーンが複雑化し、これに困難な経済環境が重なると食品偽装を行う事業者が増える傾向にある、と分析しており、複雑なサプライチェーンを持つ水産業界においては脅威とも言える問題なのです。

食品偽装のリスクから企業を守るために欠かせないのが透明性のあるトレーサビリティーの確立です。そしてトレーサビリティーの正確さを確認する方法として用いられるのがDNA鑑定。今回はこのDNAがどのようにトレーサビリティーを守るのか、小売業界のトレーサビリティーのエキスパートであるFishWiseのブログ、”Using DNA to Fight Seafood Fraud”をご紹介いたします。


FishWise ”Using DNA to Fight Seafood Fraud”
『DNAで防ぐ、水産物の表示偽装』
(翻訳/抜粋/編集:シーフードレガシー)


『DNAで防ぐ、水産物の表示偽装』By FishWisePhoto credit:FDA

コーヒーはコーヒー、チョコレートはチョコレート、このくらいの識別であれば消費者誰でもができることです。ではシーフードはどうでしょう。その種類の多さと多様な加工方法のため、誤った表示や魚種のすり替え、偽装といった問題が後を絶ちません。加工手順が増えるほど、種を特定するのは難しくなり、特に魚種のすり替えはアレルギーなど消費者の健康に影響を及ぼす可能性もあります。また、違法に漁獲された魚が紛れ込んだ場合、サステナブルな魚種を選ぶことが難しくなったり、保全活動への悪影響も懸念されます。

Global Analysisは、最大で30%もの水産物で誤った表示など適切な表示が行われていないとリサーチ結果を発表しています。サプライチェーン上でトレーサビリティーを確立させることは問題のある漁業由来の魚を排除するだけでなく、企業の安全な食品調達に繋がります。MSC(海洋管理協議会)は年に2度、認証商品を対象にDNAテストを行い、トレーサビリティーのモニタリングと不正表示の予防に努めています。商品から採取された魚のDNAサンプルは商品の加工法や形状に関わらず、種の単位まで特定され、MSC内のデータベースと比較されます。この方法により、加工製品の場合は含まれるすべての魚種が判別され商品の表示の正確性が守られるのです。

From ocean to plate: How DNA testing helps ensure traceable, sustainable seafood(「海からお皿まで:DNAテストがどのように追跡可能でサステナブルなシーフードを作るのか」)によると、99.6%のMSC認証商品において正確かつ適切な表示が行われています。16カ国から250商品(ニシン、太平洋産サーモン、太平洋/大西洋産タラ、ハドック、イワシ、ポラックを含む)が集められて行われるこのテストにより、MSC認証の信頼性が証明され、MSC認証を取り扱い、CoC認証(MSC認証を加工・販売するために必要な認証)を持つ企業は安心してリスクフリーな商品を販売することができます。そしてMSC認証は企業をリスクから守るだけでなく、健全で持続可能な海洋資源の利用を手助けします。サステナブルシーフードの需要が高まる中、こうした認証は企業のセールスポイントにもなっています。

製品に含まれる水産物のトレースバックやサプラーチェーンの検査の他、MSCのDNAテストはCoC認証の確認のためにも利用されています。MSC認証を取得した魚が他の魚と混ざることなく正しく加工されているかなどがDNA鑑定により明確になります。稀にDNAの変性などにより検証を行うことができないこともあるそうですが、このDNAテストにより、サプライチェーンを通して一貫性のあるトレーサビリティーの正確さや商品の安全が保証されるのです。

水産業界において偽装やすり替えは増加の傾向にあり、トレーサビリティーの正確さや商品の適切な表示が重要視されてきています。MSC認証の魚は世界の漁獲高の10%ほどですが、水産物の持続可能性と企業の責任を評価する上でとても重要なツールとFishWiseは認識しています。

私企業、公企業問わず、継続的にトレーサビリティーの確立に取り組むことはとても重要です。高い需要と複雑なサプライチェーンを持ち世界で最も輸出入の激しい商品とも言われるシーフード。FishWiseは今後も小売、業界団体、NGO、そしてアメリカ政府と協力しサプライチェーンを通して一貫性があり、高水準、デジタルで相互運用性のあるトレーサビリティーの確立に努めていきます。



いかがでしたか?シーフードの安全性を担保するためのトレーサビリティー。そのトレーサビリティーの正確さや精度をより確かなものにするために行われるDNA鑑定。ここまでの確認があるからこそ、企業も安心してリスクフリーでサステナブルな商品を販売することができるのです。食品偽装が増加傾向にある今だからこそ、欧米企業はこうした食の安全を守る取り組みに積極的に参加しているようです。

Special Thanks to FishWise!



FishWiseは2008年に設立されたカリフォルニア、サンタクルーズに拠点を置くサステナブルシーフードのコンサルティングNGOです。生産から販売と多岐に渡る水産業界の橋渡し役として企業間の協力や持続可能な調達のサポートなど、さまざまなサービスを提供しています。特に企業をIUU漁業などのリスクから守るトレーサビリティー強化サービスはアメリカ国内でも定評があり、ターゲット、ハイビーズ、セイフウェイといった大手小売企業や流通業者、生産者、レストランなど、FishWiseのパートナーは多岐に渡ります。


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