企業の注目が集まる水産エコラベルのベンチマーク、GSSIとは?
持続可能な水産物について調べてみたけれど、横文字の専門用語が多くていまいちよく分からない…とお悩みの方、多いのではないでしょうか。サステナブルシーフードを正しく理解するためにはまずどのような枠組みがあるのかを知る必要があります。以前、ブログで大枠となる2種類のスキーム、「認証プログラム」(一般的にエコラベルと呼ばれる)と「格付け(レーティング)プログラム」については紹介しました。(→詳しくはこちらから。)ここ最近注目されているのが、東京五輪の調達方針にも取り入れられたGSSI(Global Sustainable Seafood Initiative)と呼ばれる持続可能な水産物普及のための国際パートナーシップです。今回はこのGSSIについてご紹介いたします。
そもそも、「サステナブルシーフード」とは?
世界中に存在する、持続的な水産物の消費のための水産物の格付けやラベルの基準となっているのが、FAO(国際連合食糧農業機関)が1995年に発行した「責任のある漁業のための行動規範」 (Code of Conduct for Responsible Fisheries)と2005年に発行した「水産物エコラベルのガイドライン」(Guidelines for the Ecolabelling of Fish and Fishery Products from Marine Capture Fisheries)です。これらは漁業に関わる全ての国や個人が自ら責任を持って実現していくための行動規範であり、法的拘束力はありません。故に、これらの基準を参考にした格付け・評価システムやエコラベルが世界中に多数存在します。様々な規模や枠組みのスキームが存在しますが、共通する国際ルールは持続可能な魚とそうでない魚を分かりやすく区別することです。
エコラベルの乱立
サステナブルシーフードの需要が増えたことにより、国際的なプログラムから地域限定型のプログラムなど、様々な認証プログラムが市場に出回り始めました。現在、市場に存在する認証プログラムの数は140にも及ぶ言われています。FAOのガイドラインに法的拘束力はないため、認証プログラムの質や厳しさにはばらつきがあり、どのプログラムがFAOの基準を満たしているのかを判断するにはかなりの専門知識と経験が必要となります。
見極めが肝心
そこで「持続可能な魚とそうでない魚を区別する」という認証プログラムの原点に戻り、「FAOのガイドラインを満たし、本当に持続可能な魚のみにエコラベルを与える認証プログラム」を認定する目的で発足したのがGSSIです。つまり、GSSIは漁業そのものの持続可能性を審査するものではなく、漁業を審査する認証プログラムがFAOのガイドラインを満たしているかを確認する役割を果たします。現在、GSSIにより認定を得ている認証プログラムはアラスカシーフードマーケティング協会(ASMI)が構築した水産エコラベル「責任ある漁業管理」(RFM)認証、アイスランドの責任ある漁業管理機構 (IRFM)証明プログラム、そして海洋管理協議会(MSC)の3種類が存在します。
企業やサプライチェーンへのメリット
企業がGSSIの認定を受けたエコラベルを調達方針に組み込むことで、FAOの基準を満たした水産物の調達に繋がるだけでなく、サプライチェーン側の負担も軽減されます。認証プログラムの水産物を扱うためにはサプライチェーン上の工程で関わりを持つ全ての企業が審査を受け、CoC認証と呼ばれるエコラベル商品の加工、使用許可をそれぞれに得る必要があります。これらの審査にはコストがかかるため、それぞれの企業が異なる認証プログラムを推奨することによるコストダメージはサプライチェーンに重くのしかかります。多くの企業がGSSI認定のエコラベルを支援することで、水産物のエコラベルのクオリティーの向上、そしてサプライチェーンへの負担の軽減に繋がることが期待されます。
GSSIの広がり
GSSIの運営はこの活動を支援するファンディングパートナーにより支えられています。欧米の大手小売や水産企業の他、日本からはニッスイが参加しています。ファンディングパートナー=サステナブルな水産物のみを取り扱っている、という訳ではありませんが、パートナーはGSSIの活動の支援し、大きな購買力をもって水産業界の未来をより良くしていくという大きな目標を持っています。
GSSI日本語版ファクトシート(2017年2月発行版) ダウンロードはこちらをクリック。
東京五輪の調達方針にも組み込まれ、ますます注目の集まるGSSI。今年、秋に開催が決定している第3回目の東京サステナブル・シーフード・シンポジウムではGSSIのプログラムディレクターの登壇も予定しています。