SDGs 目標14を事業に生かす!連続ウェビナー第3回 報告ブログ
連続ウェビナー「実践!今から始めるSDGs Goal 14 〜時代に取り残されない水産企業の行動とは。サステナブル Startup webinar〜」:第3回 企業ブランディングに活かすサステナビリティへの取り組み
主催:株式会社シーフードレガシー
進行役:株式会社シーフードレガシー 企画営業部 髙橋諒
連続ウェビナー「実践!今から始めるSDGs Goal 14 〜時代に取り残されない水産企業の行動とは。サステナブル Startup webinar〜」は、全4回を通して水産業を自社の事業とともに持続可能にするための実践方法が学べる講座です。
本講座では水産関連企業のみなさまをはじめ、社食などでサステナブル・シーフードの導入を考えている水産業界以外の企業の方々に役立つ内容を発信いたします。
講座内ではサステナブル・シーフードを取り巻く環境や導入した際の利点・導入しないことによる事業継続性のリスクを提示しつつ、サステナブル・シーフードを既存の業務や新規事業に組み込めるよう具体的な手法や考え方を知ることができます。
以下では第3回の内容を簡単にご紹介いたします。(第1回、第2回)
「持続可能な水産物調達と消費をめざす日本生協連の取り組みについて」
日本生活協同組合連合会 第一商品本部 本部長スタッフ 松本哲氏
〈ポイント〉
- 積極的な商品配置や広報を通じ消費者とコミュニケーションを取ることで、認証水産物に対する認知を高めることができた
- サステナブル・シーフードを手に取りやすい形で提供することで消費者の自発的な選択を促し、課題の解決に繋げている
冒頭では、松本様から日本生活協同組合連合会(以下、生協)の取り組みについてお話がありました。生協活動ではこれまでも持続可能な社会への取り組みを位置付けており、1997年の「生協の21世紀理念」、2018年の「コープSDGs行動宣言」などを発表してきました。
2021年5月には、以下の大きな3つの文書を発表しました。
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生協の2030環境・サステナビリティ政策
「10の行動指針」と「2030目標」より構成される。 -
日本生協連CO-OP商品「責任ある調達基本方針」
サプライチェーン全体を俯瞰し、人権や環境に配慮した「責任ある調達」を構築するための方針。水産分野においては、エコラベル付き商品の拡大やトレーサビリティの構築などを含むの5つの方針が定められている。 -
「コープ商品の2030年目標」
2030年に向けた各原料資材等の持続可能な調達目標について定めたもので、水産分野の目標は以下の通り。「水産物を主原料とする使用指定商品および生鮮水産物について、MSC/ASC認証商品の拡大を重点に、GSSIが認定した認証スキームによる認証品の供給額構成比を50%以上とします」
環境配慮商品について、生協は90年代から独自のマークを使用していましたが、社会的な動向を踏まえ、MSCなどの第三者認証の基準を採用しました。なお、2020年度の水産部門供給高における認証商品の構成比は12.2%でした。2018年7月からはインドネシアのスラウェシ島において「エビ養殖業改善プロジェクト(AIP)」に取り組むなど、エビ養殖業の改善やマングローブの再生に尽力しました。
また、生協組合員向けにエシカルな消費をすすめる冊子や動画の作成なども行いました。会員生協での取り組みもあり、2021年の生協組合員アンケートではMSCラベルの認知が42%に上昇しました。
2021年春には、認証ラベルが付いた商品を「コープサステナブル」シリーズとして共通ロゴを付けて販売を開始し「美味しく、食べやすく、リーズナブルな価格」で商品を提供し、消費者に選んでもらうことで、消費者が「海の資源」の保全にも自然に参加できるようにしています。
こうした取り組みが多方面から評価され、2021年10月には第3回JSSA(ジャパン・サステナブル・シーフード・アワード)においてリーダーシップ部門のチャンピオンを受賞しています。
「社員食堂におけるSDGs推進事例の取り組み」
エームサービス株式会社 運営・品質管理本部 品質統括センター 環境マネジメント室チーフ 吉岡正登氏
〈ポイント〉
- 利用者の意識醸成や行動変容を促すだけでなく、サステナブル・シーフードを「選んでもらう」ための工夫を凝らしている
エームサービス様は給食事業者として初めてCoC認証を取得し、2018年3月よりパナソニック様の社員食堂でサステナブル・シーフードを提供しています。2021年3月時点では、クライアント4社/20拠点でサステナブルシーフードの提供を継続し、累計7.3万食弱を提供してきました。
こうした取り組みの目的は、社員食堂でのサステナブル・シーフードの提供を通じ、社員の環境に対する意識を醸成したり、食堂だけでなく日常的にもサステナブル・シーフードを選択するような行動変容を促したりすることです。これにより、クライアントのSDGs「14. 海の豊かさを守ろう」への貢献につなげています。社員食堂におけるサステナブル・シーフードの提供は、利用者が該当するメニューを選ぶだけで手軽に環境貢献に参加できることもあり、徐々に規模を拡大してきました。
(提供している社員食堂のメニュー例:スライドより)
しかし「環境貢献」だけでなく、見た目・盛り付けの楽しさ、味、メニュー名などに工夫を凝らすことで、利用者に「選んでもらう」ための工夫をしています。
講座の後半では、松本様と吉岡様によるパネルディスカッションが行われました。
〈パネルディスカッション〉
髙橋:「コープサステナブル」を立ち上げるにあたって、消費者とのコミュニケーションをどう取ったか。
松本様: 環境に配慮した商品について、90年代から2000年代まではコープ独自のマークを使用していたが、社会的に第三者認証の基準が整備されてきたことから、独自のマークは解消した。エームサービス様のお話にもあったように、「環境にいいから」ではなく、消費者にとって分かりやすい形で情報を提供できないかということを意識している。いろいろなエコラベルがあってわかりにくいといった声もあるので、シリーズ化することで利用しやすくしたい。
髙橋:(ケータリングの委託の)ご依頼をいただく企業様の規模感や意識などによってサステナブルシーフードの活動という部分にかなり幅があると思われるが、御社としてはどのようにサステナブルシーフードを広げる活動をされているのか。またその取り組みにおける課題はどんなものか。
吉岡様:社会問題や環境問題へ関心が高い利用者へ訴求できるような水産物を調達できればと考えている。また、おいしく楽しい社食を通じてサステナブル・シーフードを知っていただくことで、その先の背景や課題についても関心を持っていただけるのではないかと考えている。課題は、業務用での業態の利用量が少ないこともあり、メーカーにとってはこのマーケットの経済面が成り立っていないことだ。認証の運用事務局の立場、調達の立場から何らかの形で解決できないかと常に考え続けている。
参加者:認証取得には費用もかかるが、サプライヤーに認証の取得をお願いした際、どのような反応があったか。
松本様:CoC認証については、社会的な環境の変化や企業として必要な取り組みとして前向きに受け止めていただき、ご協力いただけたことが多かったと思う。
吉岡様:企業として求められるのであれば、認証の取得もしていくべきだというようにご理解がいただけたところとお付き合いしている。裏を返すと、そうしなければこの取り組み自体が成り立たないが、だんだんマーケットや仲間が増えてきたように感じられる。
参加者:いわゆるZ世代Y世代はSDGsや社会課題に取り組む企業に好感を持つというデータを見かけたが、日本生協連様もエームサービス様も自社や食堂のオーナー会社のブランド価値向上に貢献しているように思われた。関連するエピソードがあればうかがいたい。
吉岡様:最近は、既に事業では取り組んでいるが従業員にもSDGsを浸透させたいというクライアント様から、社員食堂という空間で、SDGsを周知・浸透できるような取り組みは何かありませんかとご依頼いただくことが多くなった。
松本様:生協の組合員の方々の年齢層は高めで、Z世代Y世代の方は全体の割合では少ない。ただ、学習指導要領の改訂によりエコラベルやSDGsについての教育が行われるようになっているため、生協がしっかり取り組んで若い世代の方にも伝えていくことが今後の生協にとっても大切。社会の変化を見据えつつ取り組みをブラッシュアップしていきたい。
髙橋: 様々な企業の取り組みを見ると、社員食堂での変化感じられる。コロナ禍の影響で以前より社食は利用されなくなってきていると思われるが、そんな中でも取り組みを維持できている秘訣をうかがいたい。
吉岡様:やはりクライアント様の同意は大きい。「コロナ禍でも定期的にサステナブル・シーフードを提供してくれてありがとうございます」という声を聞くと、継続的にやっていくことに意義を感じられる。メーカー様からご案内いただいた様々な課題に配慮した食材や資材を、常に環境を見ながら選び、食堂という場で発信していく、という気持ちを大切にしている。
参加者:調達する側から見て、現在ある認証水産物のバリエーションに対して満足しているか。
吉岡様:そこは資源管理と相反する部分だと思っている。なかなか一言で答えるのが難しいが、「単純に食を楽しんでいただく」という部分の側面だけでお話すると、魚種が増えれば選択肢は増えると思う。ただあくまでも選択肢なので、魚種を増やしたからもっと認知が広がるかというと、そういうわけでもないのかなと思う。メニューのバリエーションが増えることで提供数が増えるかどうかはやってみなければ分からないが、やはり知ってほしいのは水産資源の現状を知り、サステナブル・シーフードを選ばなければいけないという状況。
松本様:持続的な生産が広がっていくという面では認証の対象となる魚種が増えるとよいと思うが、今発売している商品の原料が認証を取れるような管理が行われた持続可能な生産になっていくことが一番ありがたい。
今回はサステナブルな活動で業界を牽引する日本生活協同組合連合会様、株式会社エームサービス様にご登壇いただき、企業ブランディングに活かすサステナビリティへの取り組みについて伺いました。社会的な潮流として様々な企業や消費者がSDGsなどに理解を示すようになった現在、サステナブルに対する取り組みは必須のものになりつつあるでしょう。
(文:髙木 燎)