世界の水産物、実際に「サステナブル」なのは何パーセント?
先日、水産物の認証プログラムと格付けプログラムの運営団体からなるCertification and Ratings Collaboration (CRC)が世界の漁業、養殖漁業を対象に持続可能な漁獲割合を算出したレポートSustainable Seafood: A Global Benchmarkをリリースしました。今回は認証と格付けのコラボレーションを実現したCRCとその最新レポートの内容についてお伝えします!
Certification and Ratings Collaborationとは?
過去のブログでも紹介している通り、現在世界の水産マーケットではMSCやASCなどで知られる認証プログラムとSeafood Watchを筆頭とする資源量、漁獲・養殖方法などの情報をベースに漁業の持続可能性度を点数や色などで格付け(レーティング)するプログラムの2種類があります。どちらも持続可能な漁業と消費の普及を目的としたツールですが、プログラムの性質上、サプライチェーン上の企業の間では混乱が発生してしまうことも。
混乱を防ぎ、認証と格付けのコラボレーションで相乗効果を生み、世界規模での持続可能な漁業と養殖業を実現していくためのコーディネーターの役割を果たしているのがCRCです。
認証と格付けの役割
CRCは認証プログラムと格付けプログラムの役割を下記のように説明しています。
認証プログラム
個々の漁業や養殖漁業と直接従事し、認証取得の基準に達するために改善しなければならない環境や社会問題に関する課題の克服を要求します。また、サプライチェーン上の企業と水産物の持続可能性と社会的責任、及び認証水産物の原点(漁獲情報)の確認を約束します。 |
格付けプログラム
主要マーケットに対し、より多くの漁場を評価し、漁業と養殖漁業のパフォーマンスにおける全体像を提供することに焦点を当てています。これらの情報は、生産者に対し、改善プログラムや認証取得に関する機会の創出、また水産関連企業に対しては調達の評価を手助けします。 |
*CRCに参加する団体のプログラム概要はこちら。
世界の漁業と養殖漁業、サステナブルな割合は・・・?
CRCは先日発表されたレポート、Sustainable Seafood : A Global Benchmarkで、メンバーの5つのプログラム(ASC、MSC、Fair Trade USA、Seafood Watch、Sustainable Fishery Partnership)がカバーする漁業、養殖漁業の情報を集約し、世界の水産物の漁獲量(重量)に対してどれほどの割合が認証、評価されているのかを発表しました*。
漁業と養殖漁業を合わせると全体の約1/3で認証取得済み、格付けプログラムにて評価済み、もしくは改善プロジェクトに従事していることになります。その中で「サステナブル」と言えるのは認証取得済み、もしくは緑・黄色の評価を受けたもので、その割合は全体の1/4**に当たります。しかし、「サステナブル」と評価されている漁業の多くは欧米マーケットで需要のある魚種がほとんど。日本をはじめとする「サステナブル・シーフード新興国」では認証の取得や漁業の評価が遅れていることが課題となっています。
*本レポートでは、漁獲量に関する情報のほか、水産関連企業のコミットメントの有無、改善プロジェクトの数、CoC認証の取得状況、水産業に従事する人口など、環境面や社会面における世界の地域別の水産業の概観に関する情報も掲載されています。
**「サステナブル」の定義は様々ですが、本レポート内では認証取得漁業とSeafood Watchの緑評価を指しています。
世界水産業の持続可能性実現の鍵を握るのは
今年2月にサステナブル・シーフードに関する取り組みを展開する組織の集まり、Conservation Alliance for Seafood Solutionsの年次ミーティングが行われました。そこで議題となったのが、「世界の水産業において影響力を持つ市場をいかに動かしていくか」です。サステナブル・シーフードにおいて世界市場を牽引してきた欧米市場はもちろん、そこにはアジア圏の消費マーケットを改善していくためのキープレーヤーとして日本も挙げられていました。水産大国日本で加速するムーブメントは、アジア圏のみならず世界に対する影響力を持つ存在として注目されているのです。東京五輪が開催される2020年、そしてSDGs達成目標年の2030年と大きなマイルストーンが迫る中、日本企業も次々とサステナブル・シーフードに関する取り組みを展開し始めています。
シーフードレガシーでは、日本のビジネス環境に適った解決策を提案するだけでなく、こうした日本の取り組みを海外に発信していくことで、日本が「サステナブル・シーフード先進国」として世界市場を牽引する存在になることを目指し、引き続き企業の取り組みを支援していきます。
文:松井 花衣(CEOオフィスマネージャー)