(開催レポート)連続Web講座第1回「持続可能な水産物の調達を知る」

(開催レポート)連続Web講座第1回「持続可能な水産物の調達を知る」

国内、国外の水産資源の危機的状況に加え、SDGs達成などの社会的ニーズ、さらにコロナウイルスの影響でより信頼あるサプライチェーンの構築が求められています。社会や経済が先行き不透明な中での事業継続のためにも持続可能な調達が一層必要とされています。そこで弊社では水産物を取扱う企業、研究機関などを対象に、持続可能な調達の中でも水産物(サステナブル・シーフード)の調達の基本を理解し、実際に計画を策定できるようになるまでを学ぶ連続Web講座(全5回)を開講することにいたしました。

その第1回目「持続可能な水産物の調達を知る」が8月6日に開催されました。当日は90人を超える方に聴講いただきました!

まず開会挨拶として弊社代表取締役社長の花岡和佳男が、ニューノーマルに対応するための持続可能な調達の意義を、上席主任の山内愛子が本講座の趣旨を説明しました。

次に、持続可能な調達を行う上で知っておきたい基礎情報を講義形式で学びました。

まずはパッカード財団 環境保全科学部門日本アドバイザーの沖 恵梨氏が、パッカード財団とマーケティング・リサーチ企業のカンター社が日本、中国、インドネシア、アメリカ、チリ、メキシコの7,000人を対象に行った海洋および環境に対する世論調査の国際比較に関するレポートの概要を説明しました。調査によると、海洋保全に関する政策を支持する声や海洋環境が自国経済に与える影響は重要だと考えている割合は全ての国に共通して高い割合で得られました。一方で海の健全性に対する意識や過去10年間の海洋状態に対する認識は国によって異なっていることや、海が人間の活動によって影響を受けている要因として海やビーチでのプラスチック問題が考えられていることや、魚や海洋生物の減少といった要因に懸念を示していることが分かりました。また日本においては海洋に関する最適な情報源としてメディアやジャーナリズム重視されており、海洋問題についての積極的な発信がメディアに期待されていることが数字にも表れていました。

次に、九州大学大学院工学研究院 環境社会部門の清野 聡子准教授がSDGs14の意義、海洋保全の現状について説明しました。SDGsは世界全体が解決すべき課題の中に海洋に関する課題(目標14:海の豊かさを守ろう)を含めたという点で画期的でしたが、その前文などを読み解くと、日本と世界の保全に対する考え方に違いがあり、それゆえの課題も生まれています。一方で、日本は世界で最も温暖化が進んでいる地域の一つとして、そして豊かな漁場があり文化的にも海とのつながりが深い地域としてどのような対策を取るのか世界から注目されています。例えば現在長崎県対馬市では、漁業者の自主的な提案によりアマダイの資源保護区の設定が行われ、今年7月には「SDGs未来都市」にも選定されました。漁業者を主体者とした管理も大事ですが、行政も一丸となって取り組むことが包括的な課題解決につながります。


SDG目標に見る日本の水産事情


次に登壇したのはハワイでカンパチを養殖するBlue Ocean MaricultureのCEO、Dick Jones氏。

環境NGOのトップやWhole Foods Marketのバイヤーも務めた経験のあるJones氏だからこそ見えた、水産物の調達方針策定のポイントが紹介されました。単純に達成年や割合を決めるだけではなく、なぜ水産資源を守ることが自社にとって重要なのかといった考え方から、自社ではどうしても把握できないデータなどを専門家に依頼して集めてもらい意見を聞くことなど、実際のプロジェクトの進め方やコツをお教えいただきました。

最後に弊社の山内が調達改善を行っていくためのテンプレートを紹介しました。調達改善は1. 知る、2. コミットする、3. 調達する、4. 追跡するという4つのステップを順に繰り返すことが基本となりますが、この分野に10年以上携わってきた山内は、日本では2と3が逆転しており欧米とはまた違う形のムーブメントになりつつあるのではと分析しました。日本では、持続可能な製品数を増やしながら、ステップワイズに調達を改善する方法が定着しつつあります。しかし、ステークホルダーを巻き込んでの取り組みにするためには、実際に調達方針を策定するためのゴールとタイムラインが必要不可欠であることを再確認し、その設定の際に注意すべきことをテンプレートを用いながら説明しました。

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