このまちでずっと漁師をしたい! 北海道ミズダコ漁業をブランディング(前編) 

このまちでずっと漁師をしたい! 北海道ミズダコ漁業をブランディング(前編)

「地域の未来について真剣に考える漁師がいるから会ってみませんか?」


2018年春、北海道焼尻(やぎしり)島で漁業を営む、厚い信頼を寄せる漁師さんからメールが届き、そこで紹介されたのが、北るもい漁業協同組合の小笠原宏一さんでした。


すぐに彼に会いに東京から苫前町を訪ね、お酒を交わしながら彼の口から語られたのは、北海道苫前町の高齢化問題、漁業の後継者問題、漁獲量の低迷や浜値の問題、さらには地域社会の複雑性や政治的課題にまでおよびました。それは地域、そして漁業の未来についての熱い想いと危機感の現れでした。


北海道日本海北西部に位置する苫前町は人口約3,000人の小さな町。かつての旧羽幌炭鉱の産業遺産である送電線と道内でも屈指の強風を活用して、20年以上前から風力発電事業に町を挙げて取り組んできました。そのため現在、町の再生可能エネルギー自給率は全国9位の535.8%。余剰電力の販売も町の収益源となっています。


水産業も盛んで留萌管内唯一の特定第3種漁港にも選ばれ、ホタテの稚貝や半成貝の養殖のほか、北海道が日本一の生産量を誇るミズダコ漁が行われています。


このまちでずっと漁師をしたい! 北海道ミズダコ漁業をブランディング(前編)

獲られたばかりのミズダコ


しかし今、苫前町の人口は、15年後には現在の人口の41%にまで減少すると言われるほど深刻化しており、町の就業人口の20%が従事する漁業や加工業に及ぼす影響が懸念されています。


ミズダコの資源管理も課題です。ミズダコは北太平洋に広く分布している世界最大のタコで北海道や岩手、福島で獲られ、最近では寿司ネタとしても人気が高まっています。苫前のミズダコは主に「樽流し」という漁法によって獲られます。1つの樽にいさりと呼ばれる仕掛けを1つ付けて海に投入し、自分の縄張りを守ろうとして相手に飛びつくタコの習性を利用した漁法*1で、一度に大量に漁獲しないので環境や生態系に配慮した漁法です。しかし、今現在はこうした環境への負荷が少ないことがうまく市場には伝えきれていません。


小笠原さんのYoutubeチャンネルより。実際の漁の様子が見られます。


地域の課題、そしてミズダコの資源管理、マーケットへのアプローチ。こうした課題を解決していかなければ、稼業であるミズダコ漁をいつまでも続けていくことはできません。そこで、小笠原さんはミズダコの資源管理を科学的な根拠に基づいて行うことによって、ミズダコを守っていくと同時に、ブランド力を高め、収益性を向上させ、ミズダコ資源と漁業経営の持続性を両立しようと考え「北海道初の漁業改善プロジェクト(FIP)」を弊社村上とスタートさせたのです。


後編を読む>>>


文:村上春二


*1 マリンネット北海道より https://www.hro.or.jp/list/fisheries/marine/o7u1kr000000cv3w.html

小笠原さんのお人柄がわかる素敵なブログはこちら https://note.com/kkn_blog/n/nbc3e2d6fb449

​​​​​​​

ページトップへ戻る