このまちでずっと漁師をしたい! 北海道ミズダコ漁業をブランディング(後編)

このまちでずっと漁師をしたい! 北海道ミズダコ漁業をブランディング(後編)

資源管理を高度化 国内外の需要高まる

小笠原さんの熱い思いを受けて、2019年4月に北海道ミズダコ漁業改善プロジェクトが発足しました(前編を読む)。


資源評価をするためのデータ不足、生態系への影響度や餌魚の持続可能性、生息域の環境情報調査、漁具を紛失してしまった場合の報告体制や対策、短期・長期の資源管理目標の設定そして資源状態に応じた管理措置の策定と導入、などMSC認証の予備審査を通じてサステナブルな漁業を実現する上での課題を特定しました。


この2年間で幾度も関係者、そして樽流し部会の漁業者と対話をし、生息域や餌魚の情報収集や具体的に資源状態に応じた資源管理の策を練り協議しました。


そして2021年3月に開催された樽流し部会の総会で「CPUE(単位努力量あたりの漁獲量)*1が合計60kg以下になった場合は次年度の樽の数を15個から12個へ削減する」と具体的な管理措置が合意されました。これに加えて、既存の資源管理の取り組みである、休漁期の継続と2.5kg未満のミズダコのリリースは継続的に実行する予定です。


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苫前の漁港


世界的にタコの需要が高まっていることもあり、北米市場の量販店から弊社への問い合わせが増えています。水産庁も輸出に重きを置く流れがある中で、北米市場ではお惣菜やお寿司のネタ、加工品用にFIPに取り組む生産者からタコを調達したいという企業が多数存在します。


国内需要も徐々に増えてきています。SDGsへの具体的な取り組みとして企業との商品開発やレストランでの調達など生産現場の課題を共に解決していきたい風潮が顕在化しています。


苫前FIPミズダコの商品開発

企業や流通企業にとっても具体的なSDGsへの貢献への行動となり、漁業にとっても具体的なビジネスへとつながるFIP。何より、FIPに取り組むことによって地域漁業が自然資本と経済性の担保によって持続可能になると町の税収入の向上への期待が高まり、担い手を増やす機会創出に直結します。資源管理をブランド化するFIPはまちづくりに直接貢献をする可能性を秘めているのです。


最近では、有名鮨職人監修の加工品を作ったり、ミシュランシェフに品質向上のお手伝いをしてもらうなど、苫前ミズダコを使った商品開発も複数企業で進んでいます。SDGsへの貢献やESG投資のプロファイルをさら更に高めたい企業と生産現場の課題解決がリンクし、地域サステナビリティを実現可能とするFIP。苫前のミズダコ商品が販売され経済的な成果が出れば出るほど、同じ海域でミズダコを漁獲する漁業者のFIP参画誘致へとつながります。それは次第に影響力を増してミズダコ資源全体へのサステナビリティとミズダコ漁師の方々の生活と地域の繁栄の大きな一助となるでしょう。


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小笠原さんのFIPミズダコを使った手まり寿司


自然が人間を必要とするよりも、人間はより自然を必要とします。


サーキュラーエコノミー、自然資本、サステナビリティ、ESGなど自然と資本主義の関わり方が見直されようとしてきている昨今。そしてそこにトレーサビリティや漁業のICT化を図ることで、消費者と企業と漁業がリアルにつながる社会の実現も可能となってきています。


こうした国内外の需要の高まりを追い風に、苫前町のミズダコFIPの関係者は取り組みの意義を感じ始めています。


このようなプロジェクトがより必要とされるよう、地域サステナビリティの実現に共感する方々とつながり、浜の未来を共創していきたいと思います。


このまちでずっと漁師をしたい! 北海道ミズダコ漁業をブランディング(後編)

苫前の漁港から見た朝日



*本FIPは株式会社UMITO Partnersに移管されました。プロジェクト詳細につきましては同社へお問い合わせください。
Webサイト:https://umitopartners.com/
メールアドレス:info@umitopartners.com


文:村上春二


*1 CPUE(漁獲努力量)
一本、一隻、一網など、1回で魚を漁獲しようとして実際に漁獲できた量。
https://logics-of-blue.com/cpue/

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