SDGs 目標14を事業に生かす!連続ウェビナー第1回 報告ブログ

SDGs 目標14を事業に生かす!連続ウェビナー第1回 報告ブログ

連続ウェビナー「実践!今から始めるSDGs Goal 14 〜時代に取り残されない水産企業の行動とは。サステナブル Startup webinar〜」:第1回「他業界から学ぶニューノーマル時代における水産企業の在り方とは」


主催:株式会社シーフードレガシー
進行役:株式会社シーフードレガシー 企画営業部 髙橋諒



連続ウェビナー「実践!今から始めるSDGs Goal 14 〜時代に取り残されない水産企業の行動とは。サステナブル Startup webinar〜」は、全4回を通し水産業を自社の事業とともに持続可能にするための実践方法が学べる講座です。

本講座では水産関連企業のみなさまをはじめ、社食などでサステナブル・シーフードの導入を考えている水産業界以外の企業の方々に役立つ内容を発信いたします。

講座内ではサステナブル・シーフードを取り巻く環境や導入した際の利点・導入しないことによる事業継続性のリスクを提示しつつ、サステナブル・シーフードを既存の業務や新規事業に組み込めるよう具体的な手法や考え方を知ることができます。

以下では第1回の内容を簡単にご紹介いたします。



「世界を取り巻く現状 なぜサステナビリティなのか」
講演:WWFジャパン 自然保護室森林グループ 南明紀子氏


〈ポイント〉

  • 人間社会と経済活動の持続可能性は地球環境に支えられている
  • 環境が経済活動により破壊されてしまったことで、持続可能なモデルが描かれなくなっている
  • 認証制度や環境面・社会面での基準は持続可能であるべき
  • 法改正などの枠組みもできはじめている

まずは先行事例として、森林分野における世界の潮流をご紹介いただきました。ここ数十年で人間の消費活動による森林減少が深刻になっており、その結果として生物多様性が失われてしまったことをご教示いただきました。森林減少の主な要因は農地・植林地の拡大で、例として、インドネシアやマレーシアにおけるパーム油の生産、オーストラリア東部における牛肉用の牧場への転換が挙げられました。

人間の消費活動が環境に影響を与えたり、社会面での問題を引き起こしたりすることについて、企業や社会はどう対応すべきなのか。この話題はここ20年で特に欧米を中心に議論され、サステナビリティは世界的な潮流となりました。

1972年の国連環境計画(UNEP)の設立や1992年の国連環境開発会議(地球サミット)などを経て、2000年代には企業が企業の社会的責任(CSR)や共通価値の創造(CSV)といった考えに配慮した行動を取るようになりました。森林業界では「調達に配慮しない=気候変動に加担している」と捉えられるようになったため、企業ごとの調達方針が定められるようになったり、環境・社会面に配慮している企業に投融資の話が集まるようになりました。

講演の後半では、パーム油の課題についてご教示いただきました。生産地の1つであるボルネオ島においては、2015年までに森林のおよそ半分が消失してしまったことをはじめ、野生生物の減少、企業と地域住民間での土地紛争、現地住民への環境被害などが引き起こされてしまいました。では、この責任の所在は誰にあるのでしょうか。

実際のところ、こうした問題の責任は生産者だけでなく、知っていながら(あるいは知らずに)利用している企業にも責任があります。そのため、生産現場から小売りまで、サプライチェーン全体で森林破壊・環境問題と無関係であることを目指すのが近年の世界的な潮流となっています。具体的な取り組みの例として、2004年に設立された認証制度RSPO(持続可能なパーム油のための円卓会議)の基準などもご紹介いただきました。


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©WWFジャパン


南氏はまとめとして、企業ごとに深刻な問題を抱えている原料は必ずあるため、まずはそれらを特定し、優先順位をつけて取り組んでいくことが大切だと述べました。

〈質疑応答(一部)〉
Q:認証物を取り扱うハードルは決して低くないが、どう乗り越えているのか?
A:確かに資金面なども考えれば、特に小規模生産者にとってはハードルが高い。ただ、こうした生産者には大規模生産者や政府の支援も行われている。例え認証が取れない場合でも、生産者のギャップを埋めるようなトレーニングを施したり、いかに農地を広げずに生産量を増加させるかを考えるなど尽力している。



「水産企業の潮流から見る企業のベストプラクティスとは」
講演:株式会社シーフードレガシー 企画営業部 孫凱軍


〈ポイント〉

  • 環境問題や社会課題に反した商品は排除される= 流通透明化が企業のベストプラクティス
  • どこで「どのように」生産されたのかを洗い出すことから始める
  • 新たな価値観を持った顧客層がやってくる
  • 企業文化で選ばれる時代になってきている

1984年をピークに、減少の一途をたどっている日本の魚介類の生産量。しかし世界の魚介類消費量は過去50年でおよそ2倍になっており、漁業には更なる持続可能性が求められるようになりました。

そのような状況を踏まえ、社会の潮流も大きく変化しています。法制度の面においては、漁業法が70年ぶりに抜本改正され、資源の持続可能性と漁村・地域社会の持続可能性の両立を目指すようになりました。この中では「2030年までに漁業生産量を444万トンまで回復させる」といった水産庁では初の数値目標に対するコミットメントが掲げられました。また、2022年12月までには水産流通適正化法が施行されます。こうした流れを受けて、サプライチェーンにおけるIUU漁業由来・奴隷労働由来を排除すべく、企業にはサプライチェーンの透明化が求められます。



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こうした流れを汲んだうえで、孫は企業が取ることのできる行動を4つ提案いたしました。


1. MSY(最大持続生産量)ベースに基づくTAC(漁獲可能量)対象魚種の購買支援

【行動】購買支援による持続可能な魚種を増やす
【利点】積極的な購買及び支援が各地の漁業改善につながるため、生産者と消費者だけでなく企業や地域経済といった全ての登場人物を巻き込むことができる


2. 自社での認証水産物取扱いの現状把握と扱いの拡大

【行動】自社で認証がついている商材をどれくらい扱っているかを確認し、その取扱比率を上げていく
【利点】取り組みやすいことに加え、自社のアピールポイントを洗い出すことにもつながる


3. トレーサビリティの構築・サプライチェーンの透明化

【行動】自社が扱っている商材の来歴を把握することで、違法操業由来の原料を排除する
【利点】自社のサプライチェーン上のどの部分にリスクやブラックボックスがあるかを把握する、透明化により違法操業由来の原料を使用してしまうなどのリスクを排除できる


4. サステナブルに向けた取り組みをしているプロジェクトへのアプローチ

【行動】FIPやAIPへの購買支援、クラウドファンディングへの出資
【利点】認証水産物よりも魚種の範囲を広げることができるうえ、プロジェクトが行われている地域や経済にも影響が波及するためより大きな取り組みとなる

上記のような取り組みにより、自社の価値を向上させつつ消費者や投資家に訴えることができるほか、供給面での持続性を担保することが可能となります。また、SDGsに対して関心の高い未来世代に訴求することができれば、将来的な顧客の獲得にもつながります。

孫はまとめとして、新たな価値観を持った顧客層が企業をその文化で選ぶ時代となった現在、企業のベストプラクティスは流通透明化に取り組むこと、すなわち自社の商品が「どのように」生産されたのかも洗い出してみることだと述べました。


今回は他業界の事例や潮流をご紹介いただきつつ、水産業界の現状についても振り返りました。深刻な社会問題に対して他業界では企業や団体がどのように対応してきたかを学ぶことや、目下私たちができる取り組みについて知ることで、これからの水産企業の在り方を再度考えられるような内容となりました。


第2回「水産企業のコンプライアンス活動の先進事例と業務への落とし方」のレポートはこちら


(文:髙木 燎)

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