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(CEOブログ)サステナブル・シーフードの世界最前線 – 第8回OOC 最新報告

シーフードレガシーCEO花岡和佳男です。


2023年3月2日-3日にパナマで開催された、海洋環境・海洋経済をテーマとした国際会議「第8回アワオーシャン会議(OOC: Our Ocean Conference)に参加してきました。


政府、経済界、国際機関、シンクタンク,NGO、財団など多くのステークホルダーが集い、海洋保護区、持続可能な漁業、気候変動、海洋汚染、ブルーエコノミー、海洋の安全保障の6項目における重要課題について議論がされました。OOCは参加者が予算措置を伴うコミットメントを携えて会議に出席することが特徴の国際会議ですが、メインホールでの基調講演やパネルディスカッションは大いに盛り上がり、サイドイベントの数やサイドミーティングの活発さもものすごく、物事が国際規模でアクションにつながっていく現場を経験しました。


私にとっては今回が初めてのOOCです。前回会議(パラオ開催)では日本のプレゼンスが大きかったと聞いていましたが、今回は日本を含むアジア圏の存在は限定的だったように私の目には映りました。それでも私が今回はるばるパナマまで足を伸ばした目的は、Coalition for Fisheries Transparency による「漁業の透明性に関する世界憲章(Global Charter)」と、Blue Food Partnership による「Global Sustainable Aquaculture Roadmap」の、2つのグローバルローンチに立ち会うためです。



Coalition for Fisheries Transparency の「漁業の透明性に関する世界憲章」

トレーサビリティや透明性(トランスペアレンシー)は、持続可能な漁業を実現する上で欠かせない要素として、今回のOOCのメインホールでの議論のテーマの一つにもなっていました。


Coalition for Fisheries Transparency は、人の目が届きにくいところで起きているIUU漁業や人権侵害をはじめとする諸問題を解決するために、漁業における透明性を追求する国際NGOや社会企業などが集うグローバル・プラットフォームです。今回OOCのサイドイベントでローンチされた「漁業の透明性に関する世界憲章(Global Charter)」は、メンバー組織が政府や国際機関などに働きかけを行う際の基礎となる10原則であり、各地の現状に即した計画を作成・実行していくための指標となるもの。私は今回、このプラットフォームの設立当初からの運営理事の一人として、このお披露目会でご挨拶をしてきました。


Global Charterのローンチイベント。一番右が筆者(Photo:  Oceana/ Andres Salazar)


Coalition for Fisheries Transparency の「漁業の透明性に関する世界憲章」

  1. すべての漁船、冷蔵冷凍運搬船、補給船に固有識別番号を付け、関連機関に届け出る。
  2. 漁船免許、許可証、制裁に関するリストを公開する。
  3. 船舶の実質的所有権を公開する。
  4. 漁船による便宜置籍の使用を禁止する。
  5. 船舶位置の公開を義務付ける。
  6. 事前の許可あるいは十分な監視がない状態での水産物の洋上転載を禁止する。 
  7. 漁船から食卓まで(from boat to plate)のトレーサビリティを義務付ける。
  8. 漁船や水産物の取引に関する国際協定を批准・遵守する。
  9. 一般市民が漁業関連情報にアクセスでき、漁業資源管理に関する決定プロセスに適切に参加できるようにする。 
  10. 乗組員の労働関連情報を集約して公開する。



Blue Food Partnership の Global Sustainable Aquaculture Roadmap

今回私が関わったもう一つのグローバルローンチは、世界経済フォーラム(World Economic Forum)の海洋保全プラットフォーム、Friends of Ocean Action が指揮をとる Blue Food Partnership が発表した「Global Sustainable Aquaculture Roadmap」です。これは養殖の持続的成長を実現するための道筋をまとめた下記4章から成るホワイトペーパーで、今回のOOCサイドイベントで公開されました。私は2021年から「Frineds of Ocean Action」のメンバーを務めており、今回のこのローンチを会場で歓迎しました。


  1. Responsible production:持続性を追求する責任ある生産体制の構築
  2. Healthy consumption:消費者の責任ある養殖水産物へのアクセス
  3. Better livelihoods:労働者の労働環境や地域社会の生活の改善
  4. Enabling environment:変化する社会や自然環境への適応



IUU Fishing Action Alliance

大きな盛り上がりを見せた今回のOOCですが、一つとても残念なことがありました。


アメリカ、イギリス、カナダの政府が2022年6月にリスボンで開催された国連海洋会議で設立を発表した「IUU Fishing Action Alliance」が、追加メンバーの発表を今回のOOCで行いました。新たに参加が発表された国や地域は、韓国、ノルウェー、ニュージーランド、パナマ、EU、チリで、日本の名前がないのです。日本政府への参加の呼びかけは、昨年の国連海洋会議の時点ですでに行われており、しかも水産流通適正化法の施行を昨年末に開始したばかりの日本にとっては、IUU漁業対策の強化を世界にアピールできる絶好のタイミングであったにも関わらず、大きなチャンスロスをしてしまったように私の目には映りました。


実際、世界各地から集う多くの参加者が「あれ、日本はIUU漁業の撲滅に舵を切ったんじゃなかったの?」と、IUU Fishing Action Allianceに日本が名を連ねないことに不信感を抱き、腹を探ってきました。水産におけるグローバル・フードシステムはネイチャー・ポジティブを目指し多くのステークホルダーを巻き込んで刻々と姿を変えていますが、今回の件で、日本はまるであえてそこでのプレゼンスを薄め自らフェードアウトしているように見えて、心細く感じました。


今回のブログではOOCの現場から、 ①IUU漁業や人権侵害を撲滅するための漁業における透明性の追求、②養殖業界の持続的成長ロードマップ、③IUU漁業撲滅のための国際協力、の3点についてご紹介いたしました。いずれも、遠く太平洋の反対側で日本と無関係に進んでいることではなく、日本の水産業界が成長産業化する根幹に関わるものであることから、皆様に共有・ご報告することといたしました。


*トップ写真: Oceana/ Andres Salazar


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