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イベントコーディネーター視点から見る、ラテンアメリカの「サスシー」イベント


みなさま、はじめまして。シーフードレガシーの長谷川照乃です。

私は東京サステナブルシーフード・サミット(TSSS)や、セミナーなどのイベントの全体コーディネーターをしております。

今回は2024年2月15日から17日にメキシコシティにて開催された、「4th Latin American Sustainable Fisheries and Aquaculture Summit(LASFAS)」に、CEOの花岡とともに行ってまいりました。

TSSSのラテンアメリカ版のような位置付けとなる本イベントにおいて、企画や手配をどのように行っているのかを聞いたり、イベントの構成や演出について参考にしたいという思いで参加をしました。

初日の晩にはレセプションパーティーがあり、早速、主催者のNGO、コメペスカのイベント担当者2人とお話をすることができました。




初日夜のレセプションの様子



メキシコ人の文化や特徴

地球の裏側で開催されるイベントは大変興味深いです。文化の違いが故に、参加する人々の行動や、主催側の性質も違いがあったり、しかし似通ってるところもあったりしました。


喋りたがり屋なメキシコ人

例えば、最終日のセッションは2部屋に分かれていました。なぜ分けたかという理由が面白く、メキシコ人は喋りたい(登壇したい)人が多すぎるから、セッション数を増やした、とのことでした。しかしパネルディスカッションなどで登壇者が多いと収集がつかなくなるので、なるべく最大4人程度としているそうです。確かに、シェフ7人のパネルセッションでは、同時に何人もが発言するような、白熱したディスカッションになっていました。こういった視聴者を惹きつけ、巻き込むような話し方やトーン、それに同調して盛り上がるオーディエンスの質疑応答も、ラテンならではの情熱を感じられました。




白熱するシェフ7人のパネルセッション



メキシコのおもてなし

ロジスティックスの手配やイベント運営はイベント会社と進めているそうです。イベント会社と協働し、ホテル、レストラン、企業など様々なところからスポンサーをしてもらっているとのことでした。


実際、イベントでは参加者への記念品や、登壇者へのお礼の品、一日中提供され続ける豊富なドリンクとスナック、お昼はブッフェに夜はネットワーキングパーティーと、驚くほどのおもてなしを感じました。ほとんどの参加者が当然のように丸一日滞在しているような盛況ぶりは、やはりこの充実したサービスに起因しているのでしょうか。




(左上)LASFASの参加記念品。エコバッグ、UVネックカバー、ペン、ステッカーなど充実。
(右上)本イベントのパネルセッションで登壇した、代表取締役CEOの花岡。登壇者にはそれぞれ柄の違うネクタイと賞状が贈られました。(下)会場でのランチブッフェ。#PescaConFuturo(未来のある漁業を、の意)キャンペーンのシェフが用意してくれたそう。



同じラテンアメリカでも、国によって違う

数年前に、一度チリで本イベントを開催したことがあるそうです。同じラテンアメリカの国とはいえ、(彼女ら曰く)計画的なチリ人と、のんびり屋のメキシコ人ではワークカルチャーがずいぶん違ったようです。


なんでも許してしまうメキシコの優しさと危険性

興味深かったのは、初日2月15日のプログラムには、60〜70人の事前申し込みがあったところ、実際のご来場は120人にも上ったということでした。歩留まりどころか、申し込みをしていない人たちもたくさん来られるのが一般的だそうです。日本では一般的に、申込者数の7〜8割の参加率になることが多いように思いますが、申し込み数以上の方が来られるのには、非常に驚きました。


翌日のメイン会場でのプログラムはすでに350人の申し込みがあり締め切っていましたが、まだたくさんの参加希望の問い合わせがきており、当日もきっと申し込んでいない人がたくさん来るだろうとのことでした。実際にイベントには、朝イチからしっかりと全員が揃い席についており、大盛況でした。


つまり「フレンドリーなメキシコ人の私たちはそういった飛び込み参加を結局受け入れてしまう」と。しかしそのゆるさが、水産業のサステナビリティの話に置き換わると、なんでもOKと許してしまうのは怖いことだともおっしゃっていました。IUU漁業や人権侵害など、取り締まるところは厳しくしないといけない、それがメキシコ人の国民性における課題ではないかと、危機感を感じられているようでした。



コメペスカの活動とインパクト

コメペスカは、創立から20年が経ち、LASFASの開催も4度目となります。2017年からは「未来のある漁業を(#PescaConFuturo)」という、特にシェフたちや販売業者などから消費者にサステナブル・シーフードの普及を働きかけるキャンペーンを展開しています。メキシコやラテンアメリカの、サステナブルでレスポンシブルな水産物の消費を促進し、漁業の未来や海洋生物の多様性の保証に取り組む活動は、政府からも認知され始めています。時には方向性が食い違うこともありますが、基本的にはお互いが協力的であり、オープンマインドな姿勢を持っているとのこと。


また、コメペスカのイベント担当者は水産業界では大企業と中小企業、天然漁業と養殖業など、隔たりがあるという課題も感じているが、コメペスカとしては、それぞれの立場の人たちがそれぞれの役割を担っていくことが大事とおっしゃいました。


分裂するのではなく団結すること、話し合いがまたその先の話し合いをより豊かにするということ、それらの場を提供してサステナブル・シーフードと未来ある漁業を促進しているのがこのイベントであり、すでに大きなインパクトとなっているとのことでした。


このイベントで印象的だった、正餐形式(丸テーブル)の席というのも、参加者同士が自然とコミュニケーションを取りやすい仕組みを意図してつくっているのかもしれないと感じました。




正餐形式(丸テーブル)の席で、非競争連携プラットフォームに関するセッションに聞き入るオーディエンス。



アジアのムーブメント・フラッグシップとしてのTSSS

今年10月8〜10日にシーフードレガシーが開催予定の「東京サステナブルシーフード・サミット(TSSS)2024」は、今年で10周年という大きな節目を迎えます。


今回のメキシコシティでの第4回LASFASでの様々な発見を通して、アジアでの「サスシー」ムーブメントを代表するイベントとしてTSSSをさらに盛り上げていきたいと改めて感じましたし、イベントが人々の行動変容に良い影響を与えられるものとしていかに大事かということを改めて噛み締めることのできる、有意義な出張となりました。


これから本格的に、東京サステナブルシーフード・サミット(TSSS)2024に向けた準備をはじめていきますので、ぜひ皆様のお越しをお待ちしております!






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