課題は山積み!?東京オリンピック水産物調達基準(案)発表!
パブリックコメントで皆様の声を届けましょう!
2016年12月13日に東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会から「持続可能性に配慮した水産物調達基準(案)」が発表されました。組織委員会は現在、この調達基準案に関するパブリックコメントを受け付けています(12月27日(火曜日)まで)。皆様の声を届けましょう。詳細はこちらで確認いただけます。
後退する水産物調達基準
環境保全や資源の持続的利用は国際オリンピック委員会(以下「IOC」)の基本政策であり、食材などの持続可能な調達は大会開催にあたり重要な要件となっています。実際に2012年のロンドン大会や2016年のリオ大会では高い基準のサステナブル調達基準が設定され、また2020年の東京大会においても、東京都は五輪招致に際して「環境を優先した東京大会」を打ち出してきました。
しかしながら、公益財団法人東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会(以下「組織委員会」)がこの度公表した「持続可能性に配慮した水産物の調達基準(案)」(以下「調達方針案」)は、過去2大会のものと比較すると大きく後退しており、IOCの基本方針を満たしているとは言い難く、自らの公約をも反故にしたものと捉えられかねないものになってしまっています。
これを受けましてシーフードレガシーは、「東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会の『持続可能性に配慮した水産物調達基準(案)』に対する改善提案」を発表しました。詳細はこちらからご覧ください。
五輪調達基準が持つ役割と、私たちが描くレガシー
「持続可能性に配慮した水産物調達基準」は、東京五輪関連施設で扱う水産物の質を定めるだけでなく、それを機に私たちがこれから日本及び世界にどのようなシーフードレガシーを残すのか、その構想を具体化させる重要な役割を持ちます。
新鮮で美味しい旬のサステナブルな日本の魚をもって東京五輪で最高の「おもてなし」をして、それを機に日本の水産関連業界を復活させ、豊かな地域社会や魚食文化を未来世代に残すためには、世界に後ろ指を指されるような低い調達基準を設けてそれを100%達成するのではなく、世界基準の調達基準を設定してその目標達成に向け国内外の多くのステイクホルダーがうまく乗ることのできる仕組みを作りあげることが必要です。
組織委員会は2020年東京五輪の「3つの基本コンセプト」に「全員が自己ベスト」「多様性と調和」「未来への継承」を掲げています。果たしてこの調達基準案は、日本の水産関連業界に自己ベストを発揮させ、持続可能な水産物を未来へと継承して行くことを可能にするものでしょうか。現状維持に留まり、達成可能性ばかりを重視して基準を下げるようでは、後に残るのは負の遺産ばかりになってしまいます。
枯渇へ進む水産資源
世界的な過剰漁獲等の影響により、すでに世界の約30%の資源が枯渇状態にあることが指摘されています。また、違法・無規制・無報告な漁業による被害総額は100〜235億米ドルに達するとされており、海洋生態系、水産関連ビジネス、魚食文化の持続性だけでなく、食糧安全保障問題や沿岸地域の暮らしをも脅かす大きな問題となっています。
これらの問題を解決し豊かな海のレガシーを未来世代に残すべく、主要市場や漁業国であるヨーロッパやアメリカをはじめ様々な地域では、資源管理強化や貿易規制など様々な先進的な取り組みを進め、水産業を成長産業へと押し上げている国もたくさんあります。
しかし日本では、クロマグロやニホンウナギが相次いで絶滅危惧種に指定されるなど、漁業や貿易の規制が遅れ水産資源管理が後手に回る状態で、日本周辺海域の水産資源水準は半分以上が「低位」の状態が続き、漁獲量は最盛期の1/3以下、漁業従事者数は1/10以下にまで落ちており、回復の兆しが見えていません。