『2017年サステナブルシーフード最新トレンド』By Real Good Fish
皆様、少し遅くなりましたが明けましておめでとうございます!新しい1年の始まり、いかがお過ごしでしょうか。シーフードレガシーは2017年も日本でのサステナブルシーフード普及活動と共に、皆様に少しでもサステナブルシーフードの重要性と魅力をお伝えできるよう、ブログやFacebookを通してどんどん情報発信していきます!
さて、2017年からは、”Seafood Legacy Pick-Up Blog”と題しまして、月に1度、世界のサステナブルシーフード界から選りすぐりの記事をレビューして皆様にお届けいたします!
2017年1本目のブログは、アメリカ西海岸にあるサステナブルシーフードを専門に取り扱う宅配型のお魚屋さん「Real Good Fish」のブログ記事、”The trends in Sustainable Seafood 2016-2017“(サステナブルシーフードのトレンド2016年-2017年版)をご紹介。
Real Good Fishは地元で取れたサステナブルで旬の魚を指定のピックアップステーションに週に一度配達する地域密着型の宅配型魚屋さん。魚は配達前日に取れた新鮮なものばかりです。更に、どの海域で、誰が、どのような漁法で漁獲したかまで分かる徹底したトレーサビリティーが顧客の信頼に繋がり、成功を納めています。魚の調理が苦手…という人のために、漁師でもある専属シェフが下処理や味付けをし、自宅で簡単に本格的なシーフードが食べられる、といった便利なサービスも展開しています。
そんな漁獲から食卓まで一貫したサービスを展開するReal Good Fishがサステナブルシーフードの最新トレンドを発表!
Real Good Fish “The trends in Sustainable Seafood 2016-2017”
『サステナブルシーフードのトレンド2016年-2017年版』
(翻訳/抜粋/編集:シーフードレガシー)
ナショナルレストランアソシエーションのアンケートによると、2017年のトレンドは「サステナブルシーフード」(自家製ピクルスや、こだわりのある調味料もトレンド中のよう…)。ガーディアン誌によると、世界のサステナブルシーフード市場は2016年に115億ドルの売上(小売)を記録、これは通常のシーフード市場の10倍の成長スピードにあたります。コミュニティーの中で進化し、急速にシェアを広げるサステナブルシーフードの魅力とトレンドをご紹介!
1. サステナブルシンキング
現在、アメリカではダコタパイプラインへの抗議活動などの影響もあり、ネイティブ・アメリカンの「将来に配慮した」狩猟、採取、農耕方法や「自然と共存する」考え方に注目が集まっています。このように注目が集まる前から太平洋に面した米北西部で生活するネイティブ・アメリカン達は石炭や石油パイプラインが原因と考える水質汚染からサケや牡蠣といった沿岸に生息する生物を守る活動を行っていました。このような活動の影響もあり、カリフォルニア北部やメイン州ではサケが川を遡上できるよう、ダムの撤去が行われ、一度は失われた自然環境が取り戻されつつあるそうです。彼らが大切にしてきた「自然と共存する」考え方は、サステナブルシーフードに通じるものがありますね。
2. 缶詰の復活!
今、オシャレな缶詰が米のレストラン業界で密かなブームになっています。パッケージのデザインまで手がけ、ネット販売を行うレストランも(ちなみに人気で品切れ中の商品ばかり!)。現代風にアレンジされた缶詰は、アメリカでは馴染みの薄い小魚の普及に一役買っているようです。食物連鎖の上位にいる大型の魚ばかりでなく、小さな小魚に着目することで「バランスのとれた消費」をしようという動きが見られます。
レトロなデザインがかわいい、ニシンの缶詰
3. アメリカン・フレッシュ!
アメリカのフレッシュシーフードと言ったら、生牡蠣。そして溶かしバターをた〜っぷりつけて食べるカニやロブスターが有名です。近年は魚介類の種類も幅広くなり、ウニや見慣れない種類の貝などもレストランに並ぶようになりました。また、今までは廃棄されていた魚卵も少しづつですが、広がりを見せているようです。「生」の魚=「SUSHI」のイメージが強いですが、アメリカンなフレッシュ・シーフードもいかがでしょうか?
4. プラスアルファの価値
ローカルで環境に優しいサステナブルシーフードは輸入物に比べるとどうしても値段が高くなってしまします。そこで「サステナブル」であることは前提とし、それプラスアルファのCSR活動を加えることでサステナブルシーフードの付加価値を高める動きが近年多く見られるようになりました。Real Good Fishでは地元のぎんだら漁の網にかかる通常では廃棄されてしまう小魚を買い取り、地元の学校の給食に安く提供する「Bay2Tray」という活動を開始。地元の漁師が学校に出向きレクチャー行うプログラムも行っています。をまたサステナブルシーフードの「お取り寄せ」で人気のSalty Girl Fishermenも売上の1%を海洋保全活動に寄付しています。
地元の漁師が地域の学校でレクチャーする様子
5. 魚肉ソーセージ!
無駄なく食べるにはどうすればいいのか?日本ではおなじみの魚肉ソーセージがアメリカでも流行りつつあります。シェフが腕を振るって作る魚肉ソーセージアメリカ版はお味もいろいろ。「マスソーセージのウニマスタード添え」や「カラマリソーセージ・セージと黒胡椒風味」、「サケと柿のソーセージ」などなど。一度試してみる価値はあり?
6. アメリカでも通用するか!?プチプチ食感の魚卵!
こちらも「魚を無駄なく食べる」ことを考え、今までは廃棄していた魚卵の使い方を様々なレストランが研究している模様。海外では「魚卵=キャビア」というイメージが強いようですが、最近はイクラブーム到来!スナップエンドウのサラダにイクラをトッピングして、クミンのドレッシングを少々…そして「Ikura Shoyu Zuke」はカリフォルニアのレストラン・アワードの最終選考にも残ったそうです。地中海版カラスミのボッタルガもパスタに合わせたり、人気のようです。
控えめですが、サラダにイクラのトッピング
7. 魚は語る
サプライチェーンにおけるトランスペアレンシー(透明性)が重要視され、「誰が」・「どこで」・「どのようにして」その魚を獲ったのかが分かるようになってきました。日本でいう「顔の見える農家」のようなコンセプトです。消費者が漁師と繋がることで、魚を食べることに経験価値が生まれるのです。サンフランシスコ、シアトル、ハワイでは、毎月「Storied Fish」という漁師の話を聞きながら彼らの獲った新鮮なシーフードを楽しむイベントが開催されています。このようなイベントはアメリカ各地で開催されており、消費者と漁業者の交流だけでなく、若い漁師の育成やリクルートにも役立っているようです。
8. ベジタリアン?ペスカタリアンはいかが?
アメリカのある調査では、10人に6人がエシカルな消費を心がけている、と答えています。内、22%はビーガン、ベジタリアン、もしくはペスカタリアン(魚は食べるベジタリアン)とのこと。健康のため、動物福祉のため、もしくは環境のため・・・と様々な理由があるようです。確かに家畜を育てるためには大量の水、土地、飼料が必要であり、また二酸化炭素の排出量や環境汚染の原因も家畜のサイズと比例して増えていきます。個人の二酸化炭素の排出量は牛肉中心の食生活だと3.3ポイント、鶏肉と魚は1.9ポイント、ベジタリアンは1.7ポイント、ビーガンだと1.5ポイント。更に地元で取れた天然物の魚に限定することで、魚を頻繁に食べる人もベジタリアンと同じレベルまで二酸化炭素の排出量を抑えられる、とのこと。
9. ハワイブームはここにも!
アメリカ全土で大・大・大ブーム中のポケ(ポキ)。刺身丼にサラダがミックスされたようなハワイ料理です。主に使われるのはキハダマグロの刺身ですが、資源は右肩下がり。そこで各地のポケレストランは工夫を凝らし、魚卵や海藻を取り入れてみたり、安定した資源のあるサケやビンチョウマグロに積極的に切り替えが行われています。また、多くのポケレストランでは「スパムむすび」もポケに並ぶ人気メニューだそう。
10. 小さい魚
小魚を食べ慣れていないアメリカでは、小さい魚は飼料や肥料などに加工されます。これらの小さい魚を食用にできれば、小魚の価値は上がり、漁師にも見合った賃金が支払われ、多かれ良かれの乱獲は減少するでしょう。
11. シーフードの価値とコミュニティーとの繋がり
2016年2月にアメリカ各地でサステナブルシーフードに携わる漁師や職人が集まり、それぞれが抱える問題や、成功事例、そして今後の活動を共有する会合が行われました。そこで共有されたのが、「持続可能な」や「科学的根拠に基づいた」と言った技術的な内容ではなく、価値観の共有や、地域との関わりの重要性でした。ローカルなサステナブルシーフードビジネスはコミュニティーと共にサステナブルシーフードの価値を共有し合いながら成長していくことが成功の鍵なのです。このコミュニティーとの繋がりこそがサステナブルシーフードの本当価値である、とReal Good Fishの設立者でありCEOのアレン・ラブウェルは語ります。
Real Good Fishの出荷の様子
いかがでしたか?文化が違えば直面する問題もさまざま。アメリカでは、人気魚種への集中した消費を緩和することや無駄なく食べることが課題のよう。これは「旬」や「もったいない」という考え方が根付く日本の方が一歩進んでいるのではないでしょうか。それぞれ問題は違くとも、目標は同じです。将来に渡って美味しい魚が食べ続けられるように世界、そして日本でも様々な活動が行われています。
Special thanks to Real Good Fish!