CEOブログ:水産庁長官、農林水産副大臣に共同声明を提出し、IUU漁業対策の方向性を確認



CEOブログ:水産庁長官、農林水産副大臣に共同声明を提出し、IUU漁業対策の方向性を確認

左から:WWFジャパン植松周平氏、シーフードレガシー 花岡和佳男、神谷崇 水産庁長官、セイラーズフォーザシー日本支局 井植美奈子氏、ザ・ネイチャー・コンサーバンシー 桑田由紀子氏



こんにちは。シーフードレガシーCEOの花岡和佳男です。

5月23日月曜日、当社も加盟する「IUU漁業対策フォーラム」は、「『特定水産動植物等の国内流通の適正化等に関する法律』(水産流通適正化法)の省令発布を歓迎し、IUU漁業対策の更なる改善を求める共同声明」を、神谷崇水産庁長官および武部新農林水産副大臣に手交し、意見交換を行いました。また同日午後には、本件における記者会見を開催しました。



賛同組織およびアライアンスについて

この共同声明は、今年12月に施行が開始される「水産流通適正化法」の省令が4月26日に発布されたことに対する、「IUU漁業対策フォーラム」を含む17の組織やアライアンスからのステートメントです。この共同声明には、IUU(違法・無報告・無規制)漁業や人権侵害等の課題への取り組みで先行する欧米だけでなく、アジア圏で活動する多くの組織やアライアンスが賛同組織として名を連ねています。これは、世界の主要な水産市場国である日本によるこの度のIUU漁業問題の解決に向けたイニシアチブに対する、国際社会からの関心や期待の高さの表れです。私達は、漁業分野における透明性の向上および、監視、管理、調査の強化に向けた前向きな第一歩として、日本政府によるこの度の省令発布を歓迎します。また世界のIUU漁業を排除し、効果的な管理と協力を促進し、持続可能性を推進するために、日本のさらなるリーダーシップを奨励し、政府、企業、その他のステークホルダーと引き続き協働していきます。


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共同声明賛同組織およびアライアンス




共同声明ポイント

1:日本政府のイニシアチブを歓迎


世界二大水産物輸入市場である欧米ではIUU漁業由来の水産物の市場流入を阻止する規制がすでに行われてきた中、市場規模第4位の日本ではこれまでそのような措置が施行されてこなかったため、欧米市場に流通できないIUUリスクのある水産物が集まりやすい状態にありました。しかし、IUU漁業により調達された水産物の国内市場流入を阻止することを目的とする水産流通適正化法が日本で成立され、その施行が2022年12月から始まることにより、世界の主要水産市場である欧米日が一丸となって生産国における漁業管理の強化を支え、資源管理に真面目に取り組む生産者を守り、海洋生態系と水産業の持続可能性の追求を加速させるという、強いメッセージが世界に発信されることになります。私達は、多くのステークホルダーとの繊細な調整を重ね、IUU漁業対策先進国としての第一歩を踏み出す日本政府のイニシアチブを歓迎し、同法の確実な施行と、IUU漁業撲滅に向けた国際連携の一層の強化を奨励します。




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IUU漁業フォーラムによる記者会見の様子



2:ネクストステップの提案


水産流通適正化法はIUUリスクを国内市場から排除し国内水産業の持続的成長を実現することを目的としていますが、その目的を達成するために改善すべき点はまだ多くあります。まずは同法の確実な実施が最重要ですが、加えて以下5点における前進を今回の共同声明で推奨・提案し、神谷崇水産庁長官及び武部新農林水産副大臣と意見交換を行いました。


1. 日本に流通するすべての水産物に段階的に拡張できるような電子漁獲証明書と報告システムを確立すること


乱獲を防ぎ水産資源状態の回復を可能にする資源管理にも、また環境要因にレジリエントな業界にしていくためにも、IUUの一つである未報告な漁業が存在しない体制を構築していくことが求められます。
また、報告に要する漁業現場での手間を最小限に留めるためにも、報告内容を資源管理や漁業管理にオンタイムで反映させるためにも、報告システムの電子化が不可避だと考えます。


2. システム全体を通じてより高い透明性を確保し、EUおよび米国の既存の輸入管理制度と整合性のある主要データ要素(KDEs)を含む、GDST(Global Dialogue on Seafood Traceability)などの国際基準と一致するトレーサビリティ・システムを開発すること


生産現場だけでなく流通現場においても、サプライチェーン上でIUUリスクのある水産物が混入されない体制を構築する必要があります。世界の主要な水産市場国である日本に、国際社会からの期待が特に集まる部分です。
またその際のチェック項目については、環境の持続可能性および社会的責任を重視する国際市場へ日本企業がアクセスする機会を増やすためにも、国際的に整合性のある項目を設けることが求められます。


3. 他の65ヶ国同様に、漁船、冷凍輸送船及び補給船に関する情報をFAOに提供すること


IUU漁業に加担する船籍を業界から排除し、法令を守り真面目に資源管理に取り組む船や事業会社等を守るためにも、これらの情報が国際的に一元管理されることが重要です。


4. 日本で大量に消費され、かつ、IUU漁業のリスクが高い、マグロ類、ウナギ類、その他の天然・養殖魚種など、日本の輸入規制の対象魚種を増やすこと


水産流通適正化法またはその他の措置により、IUUリスクの高い魚種から順に輸入規制の対象に加え、確実な管理を実施することが、主要水産市場国としての国際社会への責務であり、日本の水産業の持続的成長にも欠かせません。EUはすでに輸入全魚種を対象としており、米国でも今は輸入量の約40%を占める13種が対象となっている中で、輸入全魚種を対象とする法案が下院を通過しています。日本では水産流通適正化法における輸入規制の対象魚種は、施行開始時点ではイカ、サンマ、サバ、マイワシの4種に留め、その見直しを2年ごとに行うとされています。タイムラインが明確なことは良いことですが、それに縛られることなく、より迅速な対応が求められています。


5. 水産物を輸入する際に、製造・加工過程で人権侵害が発生していないことを保証するために追加的なチェックを実施すること


IUU漁業だけでなく、水産分野における人権侵害や労働問題に対する懸念が高まっていることを受け、水産物を輸入する際に、サプライチェーン上で人権侵害が発生していないことを保証するための追加的なチェックを実施することを、加えて推奨・提案します。




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左から:WWFジャパン植松周平氏、シーフードレガシー 花岡和佳男、武部 新 農林水産副大臣、セイラーズフォーザシー日本支局 井植美奈子氏、ザ・ネイチャー・コンサーバンシー 桑田由紀子氏




日本水産業にとってのIUU漁業対策の重要性

世界人口の急増に伴い食料需要が高まる中、陸上での食料生産率向上には限度があり、地球の表面積の7割を覆う海に注目が集まっていますが、水産資源は乱獲や環境要因などにより世界的に減少傾向にあります。解決には国際協力の元での資源管理が欠かせませんが、その精神を蔑ろにし管理の網を抜けて行われるのがIUU漁業です。IUU漁業は、持続可能性を追求し管理や規制に従う生産者や関連事業会社等を不公平な競争にさらし、何より未来の人類の食料や産業を奪っています。


日本は世界有数の水産市場であることに加え、世界有数の豊かな海洋生態系に恵まれています。科学と予防原則に基づいた資源管理を実施することで、今は減少している水産資源を回復させ、その持続的な有効活用が可能になります。日本の水産業にとってこれは、食料需要が高まる国際社会に良質なタンパク源を提供し、国際課題の解決に大きく貢献することにより、持続的に成長するポテンシャルを持つことを意味します。その実現のためにも、日本の水産市場からIUUリスクを排除し、IUU漁業撲滅に向けた国際連携の一層の強化がいま強く求められていると、私達は考えます。


最後になりましたが、共同声明手交の機会をいただいた神谷水産庁長官、武部農林水産副大臣、この機会を調整してくださった職員の皆様、そして取材いただいた記者の皆様に、感謝を申し上げます。





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