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(CEOブログ)サステナブルシーフード・ムーブメント。香港で見た日本の強み・弱み

シーフードレガシーCEOの花岡和佳男です。

2023年6月16日に香港で開催された「Hong Kong Sustainable Seafood Symposium 2023」の二つのセッションに登壇しました。午前は日本のIUU(違法・無報告・無規制)漁業対策法である水産流通適正化法について、午後はサステナブル・シーフードにおける日本でのビジネスイニシアチブについて、プレゼンテーションしました。

またパネルディスカッションでは、世界各地から集まった専門家と、現地のホスピタリティ業界およびそのシーフードサプライチェーンを中心とする約100名の参加者と共に、香港のサステナブル・シーフードにおけるマーケットトランスフォーメーションのあり方について議論しました。

香港滞在時間74時間の間に、下記の4点を強烈に感じて帰ってきました。


1. サステナブルシーフード・ムーブメントの加速

香港では、政府による水産資源管理は優れたものではなく、水産流通もブラックスボックス化し、IUU漁業の温床となっている一面があります。一方でいま、私をシンポジウムの登壇者に招聘するなど、先行する日本のマーケットトランスフォーメーションも参考にしつつ、サステナブルシーフード・ムーブメントが急ピッチで根を張りつつあることを感じました。


今回3回目の開催で毎回参加者数が増加するというこのシンポジウムは、香港やマカオを拠点とする国際ホテルグループやそのシーフードサプライヤー達を中心とするリーダー企業群が集う、「Hong Kong Sustainable Seafood Coalition」というプラットフォームが主催するものです。ちなみにその代表のJaquil Dixon様には昨年、TSSS2022にご登壇いただき、香港での活動をご紹介いただきました


シーフードレガシーは現在、各地の主要ステークホルダーと協働し、東京を含むアジア圏の主要な水産物消費都市間における、マーケットトランスフォーメーションの連動をデザインしています。



2. 日本産水産物の機会損失

「日本の水産物を扱いたくて生産者や流通業者とも話をしてきたが、サステナビリティやレスポンシビリティの追求をなかなかしてくれなくて、いまだに調達できない」という悩みを、シンポジウムで出会った複数の方々から打ち明けられました。


香港に存在し、今後確実に拡大していくこの需要は、いま他国の水産物によって補われています。市場規模縮小が止まらない日本では、国産水産物の海外市場開拓が水産業界保護のための国の基本方針ですが、このままでは欧米市場はおろか、これまで当てにしてきたアジア市場にすら相手にされなくなる危機を目の当たりにしました。


シーフードレガシーは、サステナビリティやレスポンサビリティを追求する日本の水産物を求める海外バイヤーの食材調達や、サステナビリティやレスポンサビリティを追求する日本の水産物の海外市場開拓をサポートしています。ご関心のある方はぜひお問い合わせください。



3. 日本のレピュテーションリスクマネジメント

香港滞在中、福島第一原発処理水の海洋放出計画が現地でニュースになり、シンポジウム会場で私に怒りをぶつける方がいらっしゃいました。丁寧に説明をしてその場は収まりましたが、最後に「隠蔽政府として国際的に名高い日本政府から出てくる数字に信憑性はあるのか?」との爆弾を投げつけられました。


一度失った信頼を再構築することの難しさと、相手に安心してもらうには「安心してください」だけを言い続けることではなく、安心できる根拠を相手に伝わる形で示し続けることが必要であると、改めて痛感しました。


これは水産業全般にも言えることです。シーフードレガシーは、日本にリスクフリー水産市場としての国際ブランド力(安心感)を築くべく、水産流通に関わる企業の皆様の調達方針の策定・実施・進捗確認、トレーサビリティの強化、人権デューデリジェンスの実施などをサポートしています。


4. 日本が持つ最大の強み

サステナブルシーフード・ムーブメントにおいて日本が持つ最大の強みは、主役級企業数の圧倒的多さにあることを、東京同様、水産物消費主要都市でありながら主役級企業が少ない香港から日本を見て、改めて感じました。


日本は世界の大手水産企業100社のうち本社を構える企業数が最多の国であり、大手水産企業群をはじめ、複数の大手食品企業、大手商社、大手小売、大手ホテルグループ、大手ケータリング企業などが、サステナビリティやレスポンサビリティを追求する活動や事業を展開しています。国内外の金融機関からの関心も高まりつつあり、アジアのマーケットトランスフォーメーションを牽引する基礎が確実に構築されてきていることを感じます。この強大なポテンシャルを活かして成果に結びつけることができるか、それともジャパン・パッシングの道を転げ落ちるか、日本の水産業界やその恩恵を受けるすべての人たちは、いま岐路に立たされています。


シーフードレガシーは、東京がアジア圏のサステナブルシーフード・キャピタルとなり、日本がアジア圏のマーケットトランスフォーメーションを牽引する役割を担えるように、上記の取り組みに加え、課題意識と目標を共有するマルチステークホルダーが集まるフラッグシップイベント「東京サステナブルシーフード・サミット(TSSS)」の年次開催や、複数の非競争連携プラットフォームの運営を行っています。TSSS2023は10月17-19日に3年ぶりとなるフルリアル開催。事前登録の受付は8月からスタートします。ぜひ皆様のご参加をお待ちしています。



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