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SEAFOOD EXPO ASIAで感じた日本の水産マーケットの将来性

企画営業部の孫 凱軍​​です。2022年9月14日から16日の3日間にかけてシンガポールで開催されたSeafood Expo ASIA に参加致しました。


参加の目的はアジアにおいてのサステナブル・シーフードのマーケットトランスフォーメーションと各国のサプライヤーにおけるサステナビリティの取り組みと商品の確認、サステナブル・シーフード・カタログ(以下SSC)への掲載アイテムのリサーチです。


本イベントの出展者は215団体・企業、42カ国からの出展があり、アジアに限らず、米国、ヨーロッパ、オセアニア、インドなど、全世界から参加しており、日本からも3団体の出展がありました。
コロナの影響により、開催規模はコロナ前に比べて縮小していましたが、多くの関係者が世界各国から参加しており、3日間通して大勢の人で賑わっていました。



期間中、会場内を隅々まで回り、ほぼ全てのブースを参観したのですが、感覚として7〜8割の出展者がサステナビリティについてPRしており、認証ラベルを取得していることを大きく展示していました。これは当初予想していた以上であり、いい驚きでした。国に関係なく、ほぼ全ての国と地域のブースでサステナビリティがPRされていました。合間を縫ってシンガポール現地の一般的な量販店にも足を運んでみましたが、缶詰や冷凍品などで認証付きの水産品は多く見かけることができました。



カンファレンスのほとんどが持続可能性の話

3日間のを通して会場内で行われたカンファレンスは全部で12セッションありましたが、そのほとんどはサステナビリティやトレーサビリティ、IUU(違法・無報告・無規制)漁業など水産の持続可能性に関わるテーマで占められていました。やはりそれだけ世界の水産のサステナビリティというのはメインの潮流になっており、いかにサステナビリティを担保するかが世界の共通認識であることがわかります。


印象的だったのは多くの企業、団体から登壇された方々の多くの方が「チャレンジ」という言葉を口にされていたことです。取り組みには困難はつきものですが、それを恐れずに取り組むことで自社のサプライチェーンが透明化され、事業を続けていく上で多くのリスクを減らし、マーケットの需要に答えていく。この一連の取り組みが企業そのものの持続可能性向上にもつながっていくと多くの方が共通して認識していることが感じられました。弊社の花岡も日本のスピーカーとして登壇しましたのでその内容については別途花岡のブログを読んでいただければと思います。



認証商品はスタンダードだが

3日間で認証商品を展示していたブースの担当者を中心に100名以上の方と名刺交換をしましたが、認証の取得は当たり前で、商品の輸出先によってラベルを使い分けることも行われていると聞きました。また、日本ではあまり馴染みがないFIPAIPについても当たり前に会話の中に出てくるのがとても新鮮でした。私が認証商品を探していると聞くと皆さん一様に「あるよ」と返事をしてくれますが、日本企業と取引しているかと聞くと取引はあるが認証をつけたものをリクエストされることはあまり無いとの返答が多く聞かれました。やはり日本での認証商品の需要が諸外国に比べるとまだ少ないことを反映している一方、裏を返せば日本マーケットの需要さえあればそれに応えられるサプライヤーがこれだけいるということでもあり、日本でサステナブル・シーフードを推進していく上での将来性を感じました。


弊社が運営するサステナブル・シーフード・カタログを紹介し、掲載を打診すると日本進出のチャンネルとして多くの担当者がぜひ載せたいとの姿勢を見せてくれました。掲載作業は随時進めて皆様に案内させていただきます。これを機に日本のサステナブル・シーフードの流通量を少しでも増やせたらと思います。


認証だけでは足りない

上段では認証商品がとても充実していると書きましたが、それだけで十分に市場の需要を満たせるかと言えばそうではありません。認証品だけではやはり魚種に限りがあり、魚食文化が特に発達している日本の水産マーケットを満たしていくには認証以外の持続可能性の担保方法が必要です。日本の漁業者の9割近くを占める個人や家族経営の小規模事業者が認証を取得するにはコスト的にもノウハウ的にも大変困難です。しかし、そのような小規模事業者がマーケットを支えているのが現実であり、彼らを無視することはできません。これらの小規模事業者を持続可能なものにし、取り組みの中身や科学的な基準に基づいているかどうかを確認、チェックできる仕組みが必要ではないかと考えます。そしてその仕組みは末端企業も参加し、出口を提供出来るものであることが必要であり、理想的だと私は思います。


日本マーケットのこれから

改正漁業法や、水産流通適正化法が施行されていく中で日本の水産のサステナビリティは底上げされていくだろうと思います。しかし、それだけでは足りないのも事実だと思います。水産業の衰退、水産資源の減少は法律だけでは止められないからです。一般消費者が水産業の衰退と水産資源の持続可能性について認知し、自分事として関心を持つことが必要だと思います。
そのためには消費者に対してもっと水産のことが伝わるような販売の仕方や流通の仕組みをつくっていく必要があると思います。水産業全体が変わっていくためには個人や企業単独の努力では困難なことであり、異業種間、同業種間、生産者と販売者と消費者など全てのステークホルダーが一丸となって変えていく必要があると思います。


シーフードレガシーは全ての水産に関わるステークホルダーと協力し、マスの力を使ってこれからも水産の持続可能性を推進していきます。


皆様には今後もご協力とご指導の程をいただけますよう、心からお願い申し上げます。

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